住宅事情:東京VSバンクーバー 引っ越し編

前回からの続き・・・

バカ高い初期費用と言う予想外の大ダメージがあったものの、お化けも出なそうなお気に入りの賃貸「マンション」も見つかり、いよいよ夢の東京生活が始まります。しかし、その前に引越しという問題がありました。ま〜引越しと言っても、カナダからスーツケース1個で日本に戻ってきたので、そのまま「マンション」に入り込めば良いのですが、もちろん室内にはトイレとガスレンジ、そしてエアコンしか設置されていません。床はフローリングなので段ボール敷いても寝るのは痛そうです・・・っていうか家具揃えろよ!ってことですよね。そうなんですよ・・・どうしましょう家具。そもそも1年ポッキリだけの東京生活のために家具を新調するのもね〜、もったいない。それにかつて京都からカナダに引っ越すときに、粗大ゴミを捨てるのになんと苦労したことか。ちょっとトラウマになっています。粗大ゴミシールを買って、ゴミ業者に連絡して、指定場所に出して、あ〜めんどくさかった(って全然普通か?)。案外そこはカナダはアバウトで、なんでも指定ゴミ置き場にポイ!すればOKなので楽なんだな〜(でも環境的には良くないけど)。そんな訳で、家具を買う問題と捨てる問題に悩まされ、いったいどうすればいいのかと悩む私。いっそのこと布団一式で生活するか!?しかしそこは賢い私(そうなんですよ)、ハッと思い付きます。あ、レンタルあるんじゃね!?


「レンタル家具」と検索すると、ふふふ、思った通りたんまり出てきますよ、レンタル家具屋。これなら捨てる問題は一気に解決です。さらにデリバリーもセッティングも全部レンタル屋さんがやってくれるから楽ちん楽ちん。さて、それじゃー私に必要な家具とはなんだろう?
実は私こう見えて基本「自炊派」なんですよ。だから、まずは冷蔵庫と電子レンジはレンタルしないとね!(チンする自炊派か〜!?笑)。あと洗濯機。そしてメインルームには(ってワンルームマンションだけど)、ダイニングテーブルと、うん、あとせっかくだからソーファーとソファーテーブルも入れてみようか〜、と家具リストを見ているうちにインテリアをカッコよくしてやろうという欲がだんだんと湧いてきます。そして最後の極め付けは「ダブルベット」。独り身の私なんですがカナダではダブルベットで寝てたんですよ〜、っていうか北米って基本ダブルベットじゃないですか?(って誰に聞いてんだ・・・)。なぜかと言うとダブルベットを基本に、さらにそれの上をゆくクイーンベット、カリフォルニアキング、そしてキングとどんどんサイズは大きくなっていきますが、私の周りの人結構みんな普通にクイーンやキングベットで寝ていますよ(ま〜体格も立派な人が多いからかもしれないけど・・・)。そんな訳なので、ベットはダブルでレンタルしましょう。寝相の悪い私には大きいサイズほど落ちる心配がないから安心です。実際寝ててベットから落ちたこと何回かあるし・・・・
と言うことで、家具は基本的にレンタルで決めちゃいました。


カーテンとか雑貨はニトリで揃え(ニトリって楽しいね〜)、あとはレンタル家具が届けば引越し終了。いやほんと、日本の引越しってなんて楽なんだろう〜。カナダでレンタル家具屋なんて聞いたことないよ。こういう点では、日本って痒いとこに手が届くサービスが充実していて凄いと思います。な〜んて呑気に考えていたのですが、ふと胸に疑問が浮かびました「家具ぜんぶ部屋に入るかな?」・・・とくにダブルベット。いやな予感がします。私は急いで間取りを取り出して見ると、そこには8.1畳と書かれているのですが、ダブルベットって何畳なんだ〜!?ダイニングテーブルを入れて、ソファーとソファーテーブルを入れて、さらにダブルベットを入れた8.1畳のワンルームマンション・・・果たして移動できるだけのスペースは残っているのか!?全てがきっちきちに詰まった部屋を想像するとダサくて笑えるけど最悪です。せっかく奮発した東京でのマンション暮らし。カッコよくキメたいのに・・・涙。
しか〜し、これを見よ!レンタル家具が到着し、全てを入れてみたら、「なんと言うことでしょう〜まるでモデルルームのようなシンプルで清潔な部屋に大変身〜」って感じで、予想以上にぴったりハマりましたよ。さすが私!センスも抜群です(笑)。カナダの友達に自慢げに写真を送ったら「シンペ〜Airbnbで住むとこ決めたんだ〜」とか「家具付き物件選んだんですか?」とか「生活感ない部屋だね」って返信がいっぱいきたので、どうやら民泊風インテリアらしい。それって褒められてるって事だよね?
そんな訳でいよいよ始まった東京生活。まずは窓を開けて換気しましょう・・・
しかし!その時問題発覚!!!


おや?リンリン〜チンチン〜っと風鈴の音が聞こえてくるではないですか。それもすぐ近くで!耳を澄ますとどうやらマンション棟真隣の古いお宅からのようです。窓から顔を出して確認すると、やっぱりお隣のお宅のドアに風鈴が吊るされてあります。風鈴の音、私大好きです。夏っぽいし、風情もあるし、涼しげで・・・しか〜し、東窓から聞こえてくるこの風鈴、ちょうど私の枕元なんですよ(涙)。まーそこにベットを置いたのは私なんですけど・・・これはちょっと夜中が心配だ、と私は思いました。気にしなければ気にならない風鈴の音、しかし一度気にしてしまうとすっごい気になる風鈴の音。もうすでに気にしてしまった私は、絶対寝るときに気になるに違いない。いや、今「寝る時に気になるかも」という擦り込みを脳味噌に入れてしまったのだから、むしろ寝る時にわざわざ風鈴を気にするはずです(笑)。う〜む、どうしよう?さっそくの騒音問題に直面する私。でもこれってそもそも騒音って言うのかな???
そんな時は・・・そうだ!グーグル様にお伺いしよう!と言うわけでまずは「風鈴問題」についてグーグルを使って調べてみました。


そこには驚きの結果が!
まず「風鈴 騒音」って検索したら、いっぱい出てきましたよ。「隣のマンションの風鈴の音がうるさくて困ってます」みたいに結構悩んでる人多いみたいです(とくに東京で)。さらに東京都環境局ホームページでは「生活騒音」の一例としてなんと「風鈴」が上げられていたのです。「風鈴が騒音にされるなんて、世の中風情がなくなったものじゃの〜」と普段の私なら嘆くのですが、今回は私が張本人なので「やっぱりね」と一安心する日和見な私。これでお隣の風鈴が「騒音の根源」だと判明しました!(って言う私が怖い!?)。しかし次の問題は「じゃーどうすんの?」です。それは・・・グーグルしてみましょう!これがカナダなら直接お隣に行って相談(文句ではなく?)するのですが、ここは日本、それも東京。下手な事して引越しそうそう揉めるのは嫌です。なのでグーグ様にお伺い。するとここでも驚きの結果が!


「風鈴問題対処法ランキング」(byグーグル検索)
まずは3位から・・・3位は「慣れるように努力する」。でた〜!これ出ると思ってました・・・って言うか私も考えた。「気にしないようにして無駄な争いを避ける!」ですよね。私もこのアプローチ好きです。そう!風鈴問題はそれを気にする私の問題なんです。だから私が気にしなければ全て解決〜!って他人には私は自信を持ってアドバイスしますよ・・・でもそうするともっと風鈴が気になってますます風鈴問題で寝れなくなりそうだ・・・だからこれはダメだわさ、と思った私は早くもこれは却下することに決めました(笑)。はい次!


では2位に輝いたのは・・・「管理人さんに苦情を言ってもらう
う〜む・・・これはちょっと・・・だいたいまず第一に管理人さんにまだ会ってないから誰だか分からないし、それに引越し早々管理人さんに苦情言ってもらうのはね〜。おまけに第三者を入れると自分の言ってることが違う風に伝わってしまうかもしれないし、管理人さんも困るかもしれないし・・・なんてウジウジ考えてしまってこの案も乗り気になれません。他にもっとないのかな・・・はい次!


それでは堂々の第1位は・・・「匿名の手紙を書いて送る
え〜!?マジで?これがお勧め第1位なの!?
私このアイデアにはおったまげました。これって一番やっちゃいけないアプローチじゃないか?と思ったのですが、しかしグーグル様によれば「争いを避け、そしてその人にいかに近所の人に迷惑をかけているかを分らせてあげることができるので、その人も手紙をもらったことに感謝するでしょう」とあるのです。う〜む、確かにそんな手紙を貰えば誰かに迷惑をかけている事は分かるだろうけど・・・感謝までする???

もし私が匿名の手紙を貰ったら、まず最初に思うこと、それは感謝の気持ち!・・・の訳ないだろ〜!まずは「気持ち悪い」と思い、そして怒りがこみ上げるはずです(笑)。堂々と言ってくれれば良いのに・・・と思い。そして怒りに身を任せ、きっと新たに風鈴を5つくらい軒先につけて近隣住民に挑戦するはずです(って言うお前が粘着だよ!?)。ま〜それはともかく、私にはさすがに匿名の手紙まで書く勇気はありません。そもそも最近手書きで書くことなんてないので私の文字すっごい汚くて自分でも読めないくらいなんですよ。そうなると匿名の手紙は必然的にカタカナで書くこととなり「フウリンウルサイ。スグニハズセ!」と言う感じの脅迫文みたいになってしまう事でしょう。だいたいもし匿名の手紙を送ったとして、それでもお隣が風鈴外さなかったら、それを文句に言った私が匿名の手紙を書いた犯人だってバレて、ますます雰囲気が悪くなるんじゃない?と思うのですが・・・と言うわけでこれは絶対却下です!


私は個人的に以下の二つの方法を考えていました:

1.直接お隣に行って風鈴を外してもらうか、別の場所に移してもらうようお願いする

2.それでもダメだったら、真夜中にこっそり風鈴の紐をハサミで切り落とす


だったのですが、どっちもグーグル様はお勧めしません。犯罪行為になる2番目はともかく、1番目もダメだって言うんですよ。その理由は「直接文句を言うと角が立って、気まずくなるから」・・・ま〜確かに言い方って難しいよね。文句を言ったつもりがなくても文句を言われたって思われることもあるし、怒られるのも嫌だけど、必要以上に恐縮されちゃうのも困るしね・・・(でも匿名の手紙ならそれは大丈夫なのか???)
う〜む、う〜むとお隣の涼しげな風鈴の音色を聴きながら一生懸命考えた結果、私は・・・


「フウリンヲタダチニハズシナサイ!」って匿名の手紙を送りました〜!って言うのは嘘で、直接お宅訪問しましたよ。それより前に不動産屋のお兄さんに「引越し挨拶って東京ではどうしてるんですか?」と聞いたことがあったのですが、その時お兄さんに「最近はセキュリティーの関係でやらない人が増えてますけど、やっておくと色々とプラスですよ。隣の部屋と真下の階の人にタオルとか配ると良いですよ」と言われたので、一応ギフト用のタオルを挨拶用に準備していました。なのでそのタオルを持って、マンション隣のお宅へと突撃しに行ったのでした。


まずピンポーンをする前に、仕事で使うソーシャルワーカーの顔を作ります。いえ、いえ、同僚Kさんに見せるイライラ顔ではありませんよ!あくまでも新患さんに見せる「爽やか」で「温か味」のある笑顔です。この「爽やか」笑顔は私の得意技です(自称)。と言うわけで、私は悪徳セールスマン風の爽やかな笑顔を作り、息を大きく吸って「ピンポーン」しました。「はい、はい」っと玄関を開けたのは・・・おばあちゃん!
ラッキ〜!私はほくそ笑みました。だって私、お年寄りいっぱいの腎臓透析科で働いてきたので年寄りの心を掴むのは大得意なんですよ。
「あ、こんにちは〜。私、本日、真隣のマンションの二階に引っ越して来たものなのですが、こちらのお宅もご近所ですので挨拶に来ました〜」と元気いっぱいに話す私。我ながらすでに胡散臭い。お婆さんも少し戸惑っているように見えます。そりゃそうだよね。普通、隣のマンション棟に引っ越してきた人が、いくら近所と言っても隣の一戸建ての人にまで挨拶はしないもんね〜(笑)。でも私は爽やかに続けます、「あのこれつまらないものなんですが、もしよかったらどうぞ」とタオルを差し出す私。「いえいえ、お気遣いなく」と断ってくるおばあちゃん。そりゃそうだ。突然変な若者(?)がやってきてタオル受け取れって言われても、なんかされそうで怖いやね〜。しかし私は諦めません。「いや、本当につまらないものなんで、挨拶がてらどうぞお受け取りください」と結構強引に攻めます。「あら、悪いわね〜」と言いながら笑顔になって受け取るおばあちゃん。ひひひ、しめしめ、ついにタオルを受け取ったワイ〜と心の中でニンマリ「爽やか」にほくそ笑んだ私はいよいよ本題に入ります。
「あの、突然やってきて本当に恐縮なんですけど、お願いが一つあるんですが・・・」
「え?なんですか?」と驚き顔で聞き返すおばあちゃん。
「ここの風鈴なんですが、もし出来たら移動していただくか、取っていただけることって出来ますでしょうか?私少し音に敏感でして、眠りも浅いので少し心配で・・・」と言ってみます。基本眠りは深いんですが・・・それはここでは言いません。
「あ、これね。じゃー外しときますね〜」と笑顔で答えてくれる優しいおばあちゃん。
「本当にすみません。助かります。ありがとうございます。どうぞ今後ともよろしくお願い致します」と再び爽やかにお礼を言う私。
これにて任務終了!大成功〜!


どうやら日本の「恩と義理」文化を最大活用した私の頭脳戦が成功したようです・・・って言うよりおばあちゃんが良い人だったのでした。ま〜実際あのおばあちゃんがどう思ったかは分からないけど。もしかしたら、すっごい失礼な青年(おじさん)がいきなり安物のタオル押し付けて風鈴外せ!って恫喝されたって近所の人には言ってるかもしれないし。確かにね、いきなり引っ越してきた新入りが、古くから住んでるのローカルに「〇〇しろ!」って注文つけるんだから世も末です(笑)。それでもその日の夜には風鈴は外されており、私は本当に心からおばあさんに感謝したのでした。これでゆっくり眠れる・・・そしてぐっすり寝ました。


この件は、私が久しぶりに体験した「文化の違い」かもしれません。きっと20年前、カナダに行ったばかりの私は「主張するって大変だ」と思ったことでしょう。それが今度は「どうやって角を立てずに主張をするか」に悩むことになろうとは・・・しかし喜ばしい発見は、私がカナダで身につけたソーシャルワーカー的アプローチは、ここ日本でも通用すると言うことなのでした!ってことで強引にソーシャルワークにつなげてこの引越しシリーズを締め括りたいと思います。いや、ほんとおばあちゃん家の風鈴を切る羽目にならなくてよかった、とホッと胸を撫で下ろすサイコパスの私がいるのでした(嘘だよん、もちろん)。え?こんな住人を持ったご近所さんが心配だって?私もですよ・・・いつか匿名の手紙が届きそうで私もドキドキしています。

おわり




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2コメント

  • 1000 / 1000

  • Shimpei

    2020.05.20 11:40

    @もぐたんもぐたんさん コメントありがとうございます。 読んで頂いてると思うと励みになります! そして褒めて頂いて、ありがとう〜。ははは、頑張って日常生活のプロフェショナルとして頑張りたいと思います。 もぐたんさんのお仕事の方はいかがですか?このご時世、大変そうですね。 どうぞ今後ともよろしくお願いします!
  • もぐたん

    2020.05.20 06:28

    風鈴問題! 些細なことのようですが、大きな問題ですよね。 しんぺーさんのアプローチをにこにこしながら拝見しました。 さすがSWです。日常生活のプロフェッショナルです。 こまめなブログ投稿、楽しませて頂いてます^^