医療現場で起きる人種差別問題

「いい加減にしろぉ〜!」・・・と叫びたくてウズウズした先週の私。なぜかって?それは仕事が忙しかったからですよ!!!

普段はわりとマイペースに仕事ができるのが売りの(?)腎臓透析科ソーシャルワーカー。でも先週は私の同僚Cさんが休暇で不在だったので、彼女のカバーもしてケース数も通常時の2倍!・・・って言いたいとこなんですが、実際は通常時x5くらいな感じだった(涙)・・・というのも、私の同僚Cさんは私よりもだいぶ後輩なんですが、やる気もx5、そして実力もx5(シンペー比)なスーパーソーシャルワーカー。そんな彼女のカバーを在籍歴だけは中堅ソーシャルワーカーな私がするわけなので、そりゃ忙しくなって大変だわさ。おまけにCさんの患者さん達も、彼女の高品質なサービス(?)に慣れているので、私もそのスタンダードに合わせなければならず、心の中ではハァハァゼーゼーしながら仕事をしてました。あ〜疲れた。っていうか低品質なサービスに慣らされている私の患者さん達が可哀想だって!?(笑)


まぁ〜それでも休暇中のカバーはお互い「持ちつ持たれつ」なんで全然オッケーだし、おまけにCさんの働きぶりを今一度顧みて刺激にもリスペクトにもなったから良かったんですが、私やCさんが普段行う仕事内容とは逸脱した問題が起きたせいで、私は無駄に忙しくなって、それで思わず序盤の「てめーらマジでいい加減にしろよぉ〜!」という心の叫びが出てしまったのでした(さっきよりも、さらに口汚くなっている???)。そしてその問題とは・・・人種差別問題。


まず1件目。先月くらいから私の患者さんAさんとBさんが揉めているらしい?との噂を看護師達から聞くようになりました。それもよく聞けば、AさんがBさんとその夫から嫌がらせ(いじめ?)を受けているんだとか。こりゃ大変だ!と思い、とりあえず私はAさんに事情を聞いてみることにしました。Aさんによれば、透析の順番待ちが事の発端らしく、並んでいる患者さん達を無視して毎回一番最初に透析ルームに入ろうとするBさんとその夫をAさんが注意したことで、Bさんとその夫の怒りを買い、それ以来2人はAさんを見ると睨みつけたり、挑発したり、汚い言葉を投げてきたりするようになったそうです。Bさんの夫は体も大きくて声も大きいので(そして何度か他の患者さん達からも苦情が来て話し合いをした事もある)、Aさんも最初は怖かったそうなのですが、今では無視して関わらないようにしていると言っていました。ただAさんは一度「Monkey(サル)!」とBさんからすれ違いざまに悪態をつかれたそうで、それに関しては憤慨していました。というのも「サル!」っていうのはアジア系カナダ人によく使われる蔑称で、とても人種差別的な言葉です。カナダでは法でも人種差別は厳しく罰せられような重罪なので、この件は看過できない問題です。ただAさんは、これ以上Bさん達を刺激したくないとも願っており、この件は大ごとにしないで欲しいと頼まれました。


いや〜どうしましょう。正義の味方(?)ソーシャルワーカーとしては悩みます。だって何も言わなかったらBさんも夫も相手を威嚇したり、罵ったり、順番を無視しても良いんだ!って思ってしまうかもしれないし、病院内での人種差別発言もますます酷くなるかもしれません。それは病院内にいる職員&患者さん達全員に影響を及ぼすし、さらに言えばBさん達のためにもなりません。かと言ってAさんの事例をあげてBさん達と話し合いを設けたら、Aさんに迷惑や、更なる危険を及ぼすかもしれないし、それに守秘義務の観点からも問題があります(特にAさんから問題にしないよう頼まれてるし・・・)。と言うわけで、私はこの件を看護師長やマネージャーと話し合ったり、職場の人種差別に関する憲章(ポリシー)を調べたり、過去の事例を読み返したり・・・と大変手間暇を取られたのですが、まだ解決してない・・・ハァ〜。


そして2件目。同僚Cさん担当の患者さんHさんにはSという娘がいて、そのSがま〜すごいんですよ。Sさんは親孝行な娘で、Hさんの週3回の透析のほとんどに顔を出しているのですが(そんな家族は珍しい)、Hさんに何か少しでも異常が見られると(感じられたら)、看護師長やドクターを捕まえては質問攻めにする・・・という、いわゆる巷で言われるモンスターファミリー。あ、でもいけませんよね、こんな風に決めつけるのは。だって患者さんや家族は医学のプロじゃないんだから、ちょっとした事でも不安や心配になってしまうのは普通だし、私だって今まで何度ささやかな怪我や病気にパニックになったことか・・・(例:円形脱毛とか腰痛ヘルニアとか色々・・・)。ただSさんの凄い(?)ところは、看護師長やドクターに「アジア系の看護師は絶対に父の担当にはしないでください!アジア系の看護師は不潔だし、怠け者だし、英語も下手だし、困るんです!」と病院内で大声で要求してしまうところ。私としては「Sさん、ちょっと周り見てごらんよ」と言いたくなります。というのも、私の職場のスタッフの8割以上はアジア系(移民都市バンクーバーらしい)。特に看護師は9割近くがフィリピン系、中華系、韓国系、インド系などのアジア系カナダ人が占めるので、Sさんの要求通りにしたらHさんケアする人いなくなっちゃうでしょ!という矛盾に気がつかないのかな〜と思ってしまいます。いやそれより何より、周りにアジア系スタッフがいるにも関わらず、こんな事が大声で言えてしまうSさんに正直おったまげです。さらに最近では看護師長に「〇〇ドクターはアジア人なの?」と医者の人種にもケチをつけるようになり、かなり深刻です。


そんな訳なので、いよいよSさんと話し合いの場が設けられることになりました。Hさん担当医が中心となって話し合いをすることになったのですが、証人&サポート要員として医療ソーシャルワーカーにも在席して欲しいという担当医からの申し出で、私も出席することになりました。でもこれが微妙な感じなんだな・・・なぜなら私このSさんと一度も会ったことないんですよ。おまけに私もアジア人。なんかドキドキするよね。「このアジア人はなんなんですか?このミーティングから追い出してください!」なんて言われたらどうしよう?おまけにサポートって何が出来るの???なんて考えてたら、その前の晩は全然寝れなくて寝不足のまま出勤した当日・・・Sさんは現れませんでした(笑)。きっとSさんは自分が尊敬する白人の担当医から怒られるのが分かった(そして怖かった?)のでしょう。毎回透析科に顔を出すのに、その日に限って欠席・・・卑怯者め!怒られるのが怖かったら、最初っからそんな事言うんじゃね〜よ!とこれまた無駄にエネルギーを費やした私は思うのでした。

それにしても一体みんなどうしちゃったの?これもコロナのせいなのか?


今までも患者さんから「最近の看護師は英語が下手な外人ばっかで嫌になる(私の事か?ソーシャルワーカーだけど・・・)」とか、「カナダは移民に全部仕事が奪われるから困るよね?(なぜ私に同意を求める?嫌味なのか?)」とか言われたことはあったけど、それは囁くように私にこっそり話しているって感じでした(ま〜だから良いってわけじゃないけど)。それが最近では時と場所も構わず大声で人種差別的発言をするような患者さん達も出てくるようになって、まったく一体みんなに何が起きてるんだ!?と思わずにはいられません。コロナストレスで我を忘れてしまった人が多くなってきたのでしょうか?それとも新たな時代に突入したのでしょうか?実際バンクーバーもコロナ前と比べてアジア系住民への差別犯罪件数が700倍に増えたという報告が上がったりと、なんだか世知辛くなってきている様子・・・恐ろしい。


という私だって人種、性別、職業などなど様々な偏見があり、日々精進をモットーに生きているわけなので人様のことは偉そうに言えません。ただこれだけは言いたい!どんな偏見や差別意識を持っていても良いけど(良くないけど本当は・・・)、せめてそれは公共の場では表現してくれるな!と。特に病院内でなどもってのほかです!患者さんは病気を治すため、そして職員は患者さんの病気を治すために働いているのに、そこで傷つけられたらまさに本末転倒です。私にとって今回のような人種差別に関わる業務は、本当に自分のエネルギーと時間の無駄なような気がして腹立たしいのです。だってお互いに傷つく事を言わなきゃ良いだけなんだから。それに病院でそう言うこと言う必要は全くないんだし(ま〜必要あるとこなんてどこにもないけど、そもそも)。


差別を受けた患者さんや職員の話を聞いて怒りが湧き、そして自分の過去の嫌な記憶も蘇って怒る・・・差別って怒りのエネルギーを呼び起こすから疲れるんですよね。でも戦わなくてはいけないからさらなるエネルギーを消費する・・・。でも他者の偏見や差別発言を変えたり止めたりすることは容易ではなく、簡単には解決できない。だからフラストレーションがますます溜まる。せめて自らを顧みて、少しでも己の偏見がなくなるように努力しよう!と思えることが今回のような件で得られる唯一のポジティブな点かもね。


・・・とこんな感じで、ただでさえ同僚Cさんのカバーで忙しかったのに、人種差別問題まで勃発して一気に私は余裕を無くしてしまったのでした。そんな忙しかった週も終わり、やっとスーパーソーシャルワーカーCさんが戻ってきます。「良かった・・・」心底ホッとする私。私がCさんのようなスーパーソーシャルワーカーになる日はまだまだ遠いな、とこの1週間の激務を通して実感するのでした(って言うか一生なれないかもね 笑)。それにしても医療現場(そして外での)人種差別問題・・・一体世の中これからどうなってしまうのか?と考えると暗澹とした気持ちになってしまいます。せめて私だけでも「寛容」と言う言葉を胸に刻んで、こんなギスギスした世界でも生きていこうと心に誓うのでした・・・と言いながら、さっそくギスギス・カッカしながらこのブログ書いたんだけどね(笑)。

おわり


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