コロナがもたらした分断

感染者が増えたり減ったりそしてまた増えたりと、なかなか収束する兆しが見えないコロナ禍。今やフラストレーションを通り越して「こりゃ~まだまだ10年くらいは続きそうだね~」なんていうような諦めというか覚悟というか達観したような気持ちまで生まれてしまう今日この頃。そんな中、私の住むBC州ではいよいよワクチンパスポートが導入され、レストラン、バー、映画館、ジムなどの屋内娯楽営業施設では「ワクチン接種者のみ利用可」という政策が着々と進んでいます。これにはもちろん賛否両論あり、ワクチンを打ってない人達、とくに「ワクチンを打たないと決めた人達」からは人権侵害だ!との声も上がっています。確かにワクチン非接種者をこういう形で締め出して罰を与えるようなやり方はいかがなものか?と私も思うところがあるのですが、同時に、医療現場でまたジワジワと感染者が増え始めた現状を垣間見てる者としては、やはりこれも「必要悪」なのかもしれないとも思うのです。さらに、私個人としても、正直なところワクチンパスポートの導入は精神的に安心感を与えてくれます。
 
 
コロナ禍が始まったばかりの頃はみんな固唾を飲んで「あらら、こりゃ大変な事が起きてるぞ!」と次々に人々が死んでいく状況を見て恐怖していたのが、ワクチンが出回るようになり始めると、突如「コロナもワクチンもすべて陰謀だ!」というような意見も出始めるようになりました(少なくともカナダでは)。コロナの最前線の病院で働いている私の耳にもそう言った話が入ってきます。多くは患者さんからなのですが、たまに職員からも「コロナなんてただのインフルエンザだよ」とか「イベルメクチンがすべてを解決する」なんて意見を聞かされる事があります。そんな意見を聞かされた私がまず思うこと、それは「インフルエンザをなめんなよ!」。というのも、インフルエンザだけでも毎年普通に多くの人が死んでいるし、若い人だってインフルエンザで死ぬこともあるんです。それに私の働いている腎臓透析患者さん達はもともと免疫力も弱いので、毎年インフルエンザの季節がやってくると気が気ではありません。そして実際毎年何名かの担当患者さんがインフルエンザによる肺炎で亡くなってしまうのです。だからこそできる限り私自身と他者へのリスクを減らすため私も毎年のインフルエンザ予防接種を受けてきたのです。だからまるでインフルエンザが風邪みたいに扱われるのが私はそもそも許せないのです。そしてイベルメクチン・・・ワクチン反対派の人達から必ず出てくる「万能薬」イベルメクチン。私は薬学の専門家ではないから、もしかしたらイベルメクチンはコロナに効く可能性もあるかもしれません、でもまだ治験も終わってない薬になぜそこまで入れ込むのでしょうか?さらに、ワクチンは怖いと言いながら治験も終わってないイベルメクチンを飲むことには恐怖心がないのか!?と、すでに勇み足でワクチンのかわりにイベルメクチンを飲んでいる人の話なんかを聞くと、私はおったまげてしまうのです。
 
 
あと、たまに私が聞かされる話に「ワクチン接種者は政府の陰謀に従うBlind Sheepだ!(盲目な羊?)」というもの。これにも「それはちょっと違うんだよな~」と私は思うのです。今年の1月に私がワクチンを受けた時、私にももちろん葛藤がありました。こんなに早くに完成したワクチン本当に大丈夫なのか?という。そしてそれは多くの職員も感じていたこと。そんな中、職場でワクチンに関するミーティングが開かれ、医師からも「コロナワクチンの短期的な効果は治験で証明されているが、長期的なリスクはまだ分からない」と聞かされました。そりゃそうだよね、だって長期的なリスクはもっと時間が経たなきゃ分からないもんね。それでもICUがコロナ患者で埋め尽くされ、そして患者さんがそこで次々に死んでいく状況、担当の透析患者さん達もコロナに罹っていく状況、そして職員間でも感染が広がっていく状況、に自分も身を置いているのだと考えたとき、自分自身と自分の身近な人達を守るために今できる最善策はワクチン接種(とマスク着用)しか選択肢はなかったのです。もちろん長期的にどんなリスクがあるか分からないのは怖かったけど、しかし今コロナに罹るリスクの方が遥かに高く、そのリスクと長期リスクとを天秤にかけて、私は今迫りくるリスクを減らすことを選んだのです。さらに私の友人ソーシャルワーカーがLong Covid(コロナ後遺症)のクリニックに勤めているのですが、そこにやってくる患者さん達がコロナ後遺症で大変つらい状況に置かれていて、さらに治療法もないのでどうしようもできない、という話を聞くにつれ、私のコロナへの恐れは強くなるのでした(そして悲しい事にこのクリニックにはコロナ禍初期の頃に罹ってしまった医療従事者達もかなりの数いるのです・・・)。そんな訳で、私も必ずしもワクチンの安全性を120%信じて受けたわけではないのです、が、これは私なりのリスクマネジメントから導き出された結果なのです。そして恐らく私の同僚達も同じ理由からワクチンを受けることに決めたのでしょう。それなのに「盲目の羊だね」なんて言われると正直ムカついてしまいます。それならワクチンは政府の陰謀だ、イベルメクチンは万能だ、と頑なに「信じている」反ワクチン派は「盲目な羊」ではないのでしょうか?
 
 
・・・とこんな話を聞くにつれ、私は「ワクチンを受けないと決めた」人達へのフラストレーションを高めていくのでした。しかし、ワクチンを受けないすべての人が上記のような思想や意見を持っているわけでもない事は分かっているつもりです。例えば、子供への影響を考えてワクチン接種を見送っている妊婦さんや、アレルギーから接種できない人、またその他さまざまな理由で受けられない、受けたくない人もいるでしょう。しかし私がフラストレーションを感じる理由は、聞いてもいないのにワクチンを打たない理由を滔々と述べて、そして説得にかかろうとする人達が反ワクチン派の一部にいるからです。そしてその理由に私はまったく賛同できないからです。ま~私が無視すれば良いことなんですけどね、それは分かっているんです!(涙)でもコロナで亡くなった患者さん達を身近で見ているので、多分ついつい私も感情的になってしまうんだと思います。だって死なずに済むのなら死んで欲しくないですからね誰でも・・・だから予防できるなら予防してほしいな~、って思っているので「コロナなんて存在しない!全部陰謀だ!」なんて話を聞かされると、ついつい私もカッカしてしまうのです(っていつもカッカしてるだろ!?)。
 
 
こんな事を書きながら今私が思うこと、それは、コロナって世の中を二分したな・・・って悲しく思うのです。コロナワクチンを打った者と打たない者が分かり合えない世界、そしてお互いに見下しあう世界。嫌ですね~世知辛くて。それでも医療現場に身を置いている私としては、やっぱり反ワクチン派の主張は理解できないし、フラストレーションもたまるし、そして悲しくもなります。先日もコロナ病棟担当のソーシャルワーカーが「私の担当のコロナ患者さんが「私の本当の病気を教えてください!」って懇願するのよ。コロナ感染です!って言っても信じてくれなくて、こんな辛い症状がコロナのはずがない!って言うからどうしていいのか分からなかった・・・」と愚痴をこぼしていました。かと思えば、その病棟ではナース達がコロナ患者さん達に聞こえるように「あ~あ、ワクチンちゃんと打っておけばこんな目に合わなかったのにね~」と嫌味を言う、と例のソーシャルワーカーの同僚はビックリしてました。あ~これぞ究極のコロナ分断社会。なんか本当に虚しく、悲しく、腹立だしくなってしまいます。これもすべてコロナの所為だと思うとなんとも憎き病気!誰か早く成敗してくれ~!
 
 
と、今回は私が感じたコロナ問題を書いてみました。
ちなみに今日(10月26日)からワクチン非接種の医療従事者は無給の自宅待機になります。
またこれもコロナ分断社会を深めてしまいそうな予感・・・
 
つづく(って言うか続いて欲しくない!)
 
 
 

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