強者ぞろいの医療事務員
医療ソーシャルワーカーとして仕事を円滑にする上で、絶対におろそかにしてはいけない事、それは医療事務のおばちゃんとの良好な関係作りです。もちろん、医療事務員には若いお姉さん方もいるのですが(男性事務員はほとんどいない・・・)、なんと言っても年季の入ったおばちゃん事務員ほど頼りにもなり、そして強敵にもなりうる存在はないのです。
そもそも医療事務員ってどんな仕事をするんでしょう?専門外の私に多くは語れないのですが、私の知る限りでは、1)診断書・処方箋を処理し病院・保健所・薬局に送る、2)カルテの作成・整理、3)患者&職員の予約・スケジュール調整、4)受付業務、5)その他雑用もろもろ(これが結構多い)、って感じで、正直ソーシャルワーカーの仕事と似通ったところもあると、私は勝手に親しみを感じているのです。なぜなら、医療チームのカースト制度においては、医療事務員はソーシャルワーカーと並んで最下位グループ・・・でも、しかし!ソーシャルワーカーと同じく医療事務員無しには病院は回らないのです。いえ、ソーシャルワーカーがいなくなっても恐らく病院は回りますが(患者ケアの質は下がるけどね!)、でも医療事務員がいなくなったら病院の機能なんか即ストップです。それくらい医療事務の仕事って病院運営において大切なんです。だって診断書や処方箋が処理されず、カルテもアップデートされなかったら、そして患者・職員のスケジュール管理が疎かにされたら、それだけで医療現場大混乱に陥ってしまいます。
そんな病院にとっても、病院で働く医療従事者にとっても、無くてはならない医療事務員なのですが、その待遇は目に余るものがあります。例えば、医療事務員の給料体系。なんと昇給は一切なし!何年働いても同じ給料なのです。30年のベテランと新人の給料が同じ・・・これモチベーション下がりますよね。そしてこれが私が後述する「おばちゃん事務員意地悪説」を引き起こす大きな一因になっているんじゃないかと思うのです。給料の他にも、医療事務員はチームミーティングから外されたり、「護身術講座」や「セルフケア講座」など医療従事者用のワークショップに呼ばれなかったり、医療事務員専用の事務所が与えられなかったりと、案外周りが気が付かない中、結構な差別的待遇を受けています。
ではなぜ医療事務員はこのような厳しい待遇を強いられているのでしょうか?それは組合の責任が大きいのです。医療事務員が所属する組合には、清掃員やポーター、調理師やカフェテリア職員、さらには救急隊員なども含めた「雑多職員」で占められています。そしてこの組合、どうやら過去の政府・保険局との交渉で、政府側にコテンパンにやり込まれてしまったそうです。前回の交渉以前は、医療事務員も昇給があり、給与水準も今よりも20%以上高かったそうです。ところが政府との交渉で給与カット、昇給ゼロ、と言う条件を飲まされてしまい今の状況になってしまったのです。これは医療事務員だけでなく、この組合参加職員すべてに適用されているので、求職欄で彼ら・彼女らの待遇をみると、昇給は一切なくフラットレートです。
このように、組合しだいで職員の待遇は大きく変わるので、組合って大事なんです。でもどうして「雑多職員」組合はもっと強く交渉できなかったのでしょうか?だって医療事務員がストライキなんか起こせば、病院運営もしっちゃかめっちゃかになって、ぜったい政府や保険局だって妥協案出すはずなのに・・・と思ってしまうのですが、多分、雑多な職員を抱える分だけ、組合員同士まとまる事が出来なかったのでしょう。とっても残念ですが、他人事ではありません。私たちソーシャルワーカーが属している「その他医療組合」だって看護組合に取り込まれそうになったり、組合員を引き抜かれたりしているんだから、いつ給与カット・昇給ゼロの憂き目に遭うかは分かりませんよ。恐ろしや~。
さて本題に戻りましょう。なんだったけ・・・そうそう「おばちゃん事務員意地悪説」!(笑)。私の経験から言わせて貰うと、医療事務のおばちゃん達、意地悪な人が多いんです。とくにソーシャルワーカーに対して。私がたまに急性期病棟のケースを受け持つ事になって、馴染みの無い病棟で、おばちゃん事務員に雑用を頼んだり、病棟の質問をしたりしても、すっごいつっけんどんに無視されたり、「あんた誰よ?」みたいな態度をされたり、困ってる姿をせせら笑われたり、ムカッとさせられる事が多いのです。その癖、ドクターなんかが「OOさん、ちょっとソーシャルワーカーさんと協力して患者さんのカンファレンス開く準備してよ」なんて言われるとヘコヘコ素直に従う、みたいなことして私の神経を逆なでするのです。これってなんなの?最下位カースト争いなのか?(怒)。おまけに同僚のソーシャルワーカーから話を聞けば、こんな経験してるの私だけじゃないんです。つまり私のせいではないってこと!(ここ大事なポイント!笑)。
また、こんな嫌がらせを受けるのはソーシャルワーカーだけでなく、なんと身内の医療事務員達(とくに新人)もおばちゃん事務員の毒牙にかかっているのです。私の知りあいに事務員の人がいるのですが、彼女もいかにおばちゃん事務員に「指導」と言う名のパワハラ的嫌がらせを受けたり、悪評を広められたりして泣かされたかという話を聞かされ、改めて「おばちゃん事務員意地悪説」の恐ろしさを知ったのでした。
しかし「毒をもって毒を制す」という諺があるように、おばちゃん事務員と仲良くなると、今度は「こんなに助けてもらっていいんですか?」って言うくらい手厚く守ってもらえるようになるのです。例えば私の透析科の事務のおばちゃんDさん。何人かいる透析科医療事務員の中でも、このDさんの悪評は素晴らしく(?)、私もDさんと中堅事務員が大喧嘩している現場を職場で見たり、またDさんに泣かされて1日で辞めた新人事務員も知っています。またDさん、私が透析科で働き始めた最初の1年間、私の名前を覚えないどころかずっと無視されてました。それでもベテランDさんから嫌われると私の仕事も大変やりにくくなるので、Dさんへの毎朝の挨拶と「ありがとうDさん」の言葉を、小学校時代先生から教えられたとおりに頑張ってやり続けた結果、ついに「おはようシンペー」とDさんが言ってくれるまでになったのです。私、本気で涙でそうになりました。どんなに意地悪・・・いや難しい人でも真心(?)を尽くせば心を開いてくれる事もあるんだな~って(自分の努力に)感動しました。さてこれ以降Dさん、私にすっごい親切にしてくれるのです。会議室を使いたくて、でも会議室が他の人に使われてるときも、その人たちを追い出して私に使わせてくれたり、書類業務でミスをしてしまった事を看護師長に隠してくれたり、病欠届けを見逃してくれたり・・・といろいろ融通を利かしてくれるのです(ってぜんぶ悪い事っぽいけど・・・気にしない気にしない 笑)。そんなDさんも今週定年退職です。寂しくなります・・・ちょっとホッとするけど。
さてこんな風に医療事務のおばちゃんは意地悪だ!なんて自己の偏見に基づいて言い切ってしまったのですが、もちろん優しい事務員のおばちゃんだって(たまに)います。でも意地悪派が圧倒的に病院には多いのは、それは業務の忙しさと差別的待遇とのギャップに起因しているんじゃないかと私は思うのです。医療事務の仕事は年季が入れば入るほど知識も技能も上がって効率的に出来るようになります。でもそんなベテランの給与が、自分の半分も仕事も出来ない新人と同じなんじゃモチベーションが下がるのはしょうがないと思うのです。その結果、燃え尽きてしまい、そのイライラを新人や最下位カーストのソーシャルワーカーにぶつけてしまったってしょうがないじゃありませんか!・・・いや、いや、やっぱりそんな事は許されません!でも私たちソーシャルワーカーはそんな彼女達の置かれた状況・環境を理解する事により、意地悪をされても気にせず、そして広い心で接する事で、いつか意地悪なおばちゃん事務員も私たちの力強い味方となってくれるでしょう(か?)。そして、どんなにムカついても頑張って仲良くなれば、自分の仕事が今の2倍は効率よく捗るんだ!と思えば、おばちゃん事務員の意地悪にも耐えれるはずです。っと適当に言ってみる意地悪ソーシャルワーカーの私がここにいるのでした(笑)。
0コメント