自動車教習の話 その3(試験編)
前回からのつづき・・・
日本に帰国そうそう自動車免許習得を目指すことにした私。東京の自動車教習所で日夜運転の練習に励み、カナダでは取れなかった免許を今度こそ日本でとってやろう!と意気込む日々。さてその行方はいかに?
カナダではdangerous driver!の一言で試験開始3秒で不合格にさせられた私も、なんとここ東京の〇〇教習所では「運転上手な優等生」として名を馳せているのでした。え?嘘じゃないよ、本当だよ。毎回の教習でも、教官に「シンペーさんカナダで運転されてただけあって運転上手ですよ(路上試験3秒爆死の件はもちろん言ってない・・・)」って言われ有頂天。昔から「褒められて伸びる子」だった私には最高の学習環境な〇〇教習所。
そんなある日。さー今日も頑張るぞ!と張り切って乗った車の教官は、今まで当たった事のない初老の教官。「よろしくお願いします!」と元気よく挨拶する私に「はい、じゃー発進して」と冷たく事務的に進める教官。あらら?今までの教官となんか違う・・・いつもなら「天気いいすね?」とか「カナダって楽しいんすか?」とか「うちの上司のハゲがムカつくんすよ」とかって会話が教官から出るのに、今日の教官は無表情で私の運転を無言でチェックしています。このまま無言で終わるのか!?と思っていると教官はやっと口を開きました。「君、今ちゃんと左方確認しなかったでしょ?ちゃんと周りの状況見て運転しなきゃ」と呟きます。「あ、すみません」と一気に萎縮する私。さらに「ほら、歩行者ちゃんと見て!これが本番の試験なら即失格だよ」と私のトラウマに塩を塗るダメ出し攻撃。イタタタ、心が痛い・・・そうなると緊張してミスがミスを呼ぶ状況に。「ちょっと左に寄りすぎ!もっと右に寄らなきゃぶつかるよ!これ試験だったら10点減点だから」とまたまた注意されます。こうなると気分も最悪で「試験試験ってうっせーんだよ!これは練習なんだよ!失敗してもいいだよ!」とムカッときて(心の中で)不良みたいに叫んでしまいます。そうして最後には「まだまだ君は運転が下手だから頑張らなきゃね」と捨て台詞(?)を残して爺は車から降りて行ったのでした。
こうなると一気に不安が込み上げてきます。「試験大丈夫かな・・・」
次の教習、この日は爺ではなく前にも担当してもらった若い教官です。
「あの私この間の教習で運転が下手って言われたんですけど、試験大丈夫でしょうか?」と聞いてみます。
するとその若い教官は「え?誰ですかそんな事言ったの?あ〜あの波平さんね(笑)。気にしなくていいですよ。あの人は昔ながらの教官ですから。シンペーさんなら大丈夫ですよ、多分」と言って励ましてくれました。
な〜んだ波平が意地悪なだけだったんだ!と勇気づけられた私だったのですが、しかしよく考えたらちょっとおかしい。
だいたい昔ながらの教官と今時の教官って教え方が違のか?
そういえば、若い教官たちは皆軒並み「全盛期(バブル期か?)に較べて教習所の生徒は半分以下に減っているんですよ。だから給料もバッサリ斬られて厳しいんですよ。昔は1000万とか稼いでたらしいですけどね・・・」と言ってため息ついてたな〜。それに今時の教習所は教官を指名したりNG(非指名)したりできるし。それだけサービスにも力を入れないとお客が集まらないってことか・・・って事はつまり私の運転が褒められたのもサービスの一貫か?指名獲得のための?なんて考えると、全てが教習所のマーケティング戦略の一環だった気がしてきます。
な〜るほど。そう考えると波平教官の厳しい指導はバブル期の自動車教習所がサービス業ではなかった頃の名残。つまり彼の指導はオブラートなし=「運転が下手くそ」=「私の本当の実力」って事だったのだ!とガッテン。うれしくない発見だったけど、でも、むやみやたらと褒められるよりも、ダメな所をキチンと指摘してもらった方が正直役に立ちます。特に運転技術って他人の命も関わる事だしね。そういう訳で、当初は言いたい放題言われてムカッときていた私だったのですが、ちゃんと考えたら厳しい指導をしてくれた波平にむしろ感謝を覚えたのでした。でも非指名にしたけどね波平・・・だって僕は褒めて伸びる子だから・・・笑
さてじゃー肝心の自動車運転試験はどうだったのか?
まずは仮免許の試験・・・ちょー緊張した。
なぜかというと、それは「久しぶりの試験だったから」。最後に試験受けたのなんて何年前だよ?恐らくあの10年前のカナダでの路上試験以来。おまけに仮免は学科の試験もあるから、それも凄い緊張。かつてカナダでも自動車の仮免(Lライセンス)を取るために学科試験を受けたのですが、その時、周りの友達や同僚は皆くちを揃えて「シンペーなら絶対大丈夫。大学院も卒業したばかりだし、仮免筆記試験なんて高校生でも合格するくらいなんだから落ちるわけないよ」と言うので、ま〜それもそうだよね!って思って受けたら見事不合格!「簡単に受かるって言ったじゃん(怒)」と周りに怒りをぶつけたら「え?落ちちゃったの?」と皆んなにビックリされて(というかドン引きされて)とても恥ずかしかった記憶が蘇ります。ますます緊張する〜。
試験前夜は一睡も出来ないほどの緊張。高校・大学受験でもこんなに緊張した事ない・・・
で、当日。技能はL字もS字も縦列駐車もほぼパーフェクト(素晴らしい!)。教官のアドバイスに従って事務の人からコース図もらって教習所内のコースを丸暗記したのが功を奏した感じです。イメトレで100万回くらい脳内走行したのも良かった。
そして学科は・・・もちろん合格。だって大学院も出ている私が落ちる訳ないでしょ!っと受かったから調子に乗ってみる(笑)。
そして1ヶ月後の路上試験。
これが肝腎要の実技試験だと思うと緊張したのですが、でもここまでくると案外平気でした。仮免の時は、まだ運転の要領も今ひとつで不安が一杯だったけど、路上に出れば道路は広いし、L字やS字みたいなゴチャゴチャしたのもないし、信号と横断歩道さえ注意を払えば大丈夫って感じで、試験前日もちゃんと寝れました。そして試験当日の担当試験官がまた優しい人で「緊張しないでいつも通り運転すれば大丈夫だから!」と言ってもらえ、一気にリラックス。カナダの路上試験のトラウマが嘘のように、ここ東京で行われた路上試験はスラスラスラ〜と流れるように運転でき無事合格!その日の受験生は13人で合格者は12人だった(よかった・・・落ちた1人にならなくて)。
そうして私は無事、自動車教習所を卒業したのでした。あとは運転免許センターでの筆記試験に合格すれば私も夢のドライバーになれるのです!
この時点で私はもう余裕のよっちゃん(古い?)でした。だって免許を取ってる友達からは「あ〜筆記は簡単だから大丈夫だよ」と言われていたからです(また!?笑)。
ところが!自動車教習所での卒業式で、教官はこう言いました。
「最近、警察署の要請で、全国で筆記試験の合格率を下げる動きがあり、ひどい自治体では合格率が60%を切るところもあるので、皆さん、しっかり勉強して筆記試験にのぞんでください!」と。
さっそくグーグル様にも聞いてみたところ、どうやらこの情報嘘じゃないみたい。どこの自治体でも合格率は軒並み70%割れ。そういえば私の父親もこの間知り合いの娘が筆記で落ちた、って言ってたな〜。これはヤバイかも。カナダでのトラウマもあり、私には「筆記試験に簡単合格〜!」なんていう成功体験はないので、これは真剣に準備しないと・・・と思い始めました。さらに、私は住民票を東京には移していなかったので、地元松本の免許センターで筆記試験を受けなければいけませんでした。親の手前一発で合格したいというプライドと、さらに合格しなければいつまでも実家滞在・・・それも困ります。おまけに地元の同級生とかに会ったらちょー恥ずかしいよ、とくに筆記で落ちたりした日には・・・
そんな訳で、私、すっごい勉強しましたよ。路上試験合格後の2日後に地元松本で筆記試験を受けることにしたのですが、その2日間で私、2500問以上の模擬問題をアプリ使って解きました。それも全国津々浦々の学科試験アプリをダウンロードして。ご飯も食べずにひたすら勉強する息子に、ついに母親は「もう勉強やめなさい!」と叫ぶほどに。こんな姿、中・高校時の母親が見たら涙を流して喜んでいたはずです、だってその当時の母親の口癖は「ちょっとは勉強しなさい!」だったから(笑)。
こんな風に病的に私が勉強をした理由・・・それは年齢への不安、だったのかも知れません。だって教習所では私は立派なオジサン。いくら若ぶっても、周りは基本、高校卒業生か大学生。たま〜に、おばちゃんも混じっていて安心したけど、やっぱり若い人が中心です。そんな中にいると、私の老化具合は一体どんなもんだろう?と不安が込み上げてくるのです。幸い、技能試験は「若い人に負けることもなく」(って言ってる自分が悲しい)大丈夫だったけど、学科試験こそ脳みその劣化が顕著に出てしまうに違いないと思い込んでいる私は、その恐怖から模擬問題を解き続けないと不安が解消しない状態にまで追い込まれてしまったのでした。
そして学科試験当日。
自宅から1時間もかかる市郊外の警察署に向かいます。さすが警察署だけあって、窓口のおじさんも横柄です(って長野県だから?)。さっそく緊張が高まります。そして周りを見れば・・・あ〜いるいる、受験生ぽい学生たちが教本必死に読んでますよ。もうここままでくれば、私は、教本なんて開きません!っていうか開けません。だって今わからない問題が出てきたらパニックですよ。だから余裕こいて自分の周りの受験生を眺めていると、どうやら私の真隣の列は全員外国人のようです。フィリピン人と中国人っぽい感じの人達が10人くらい座っています。どうやら試験問題も英語と中国語が選べるらしく、「お!長野県もやっと国際化が進んだか?」とちょっとばかり感銘を受けます。なんてボーとしているうちに試験開始!皆んな一斉に試験用紙にへばりつきます。「あ〜なんて懐かしいんだろう。大学受験みたい・・・」と大学受験には割と良い成功体験があった私は、そのノリで試験に向かうことにしました。そしてそれが吉と出たのか、試験後の発表では見事私の受験番号51番が掲示板に表示されました(祝)。そして合格者は再び試験会場に戻れ!と言うので戻ってみたら、真隣の外国人全員全滅・・・誰も受かっていませんでした(涙)。「翻訳ちゃんと出来てるの?」と試験問題に問題があったんじゃないかと心配になります。
自動車免許を取得された方ならご存知だと思うのですが、筆記試験合格後は、誰だか忘れちゃったけど警察の偉い人が来て演説します。そこで今回の合格率は62%だと言われました。
結構厳しくない?私には運転の学科試験の合格率が62%って厳しいと思うけどな・・・でもそれだけ事故防止に力を入れているって事か?
ま〜とにかく私は無事受かったのでどっちでもいいのですが、ここでの奇跡は私の免許書の写真がすごくカッコよく(?)写ったこと。少なくとも〇〇容疑者風にならなかったのは、あの1秒で機械的に写真を撮っていた免許センターのカメラマンのお陰です。
試験て緊張するけど、でもこの合格の達成感・・・しばらく味わってなかったけど最高。
「まだまだワシの脳味噌も腐っとらんぞ!」とオジサンの自信を高めてくれました。
そんな訳で、私もついに自動車免許取得しましたよ〜〜〜〜!!!!!!!
これで日本全国旅に出れる〜。
そのうち皆さんも私を見かけるかも。若葉マークつけたオジサンお兄さんドライバーが私です(笑)。
おわり
2コメント
2020.06.13 10:04
2020.06.12 04:30