医療ソーシャルワーカーを悩ます歯科治療
私、先日、1年ぶりに歯医者に行ってきましたよ!別に歯が痛いとか、そういった問題はなかったのですが、そろそろクリーニングしないとヤバいよな〜と思い、ワクチン接種も終えたことだし勇気を持って(?)歯医者に行ったのでした。通常ならクリーニングは半年に一回の割合で行っていたのですが、コロナ禍になってからは歯医者も閉鎖されたり、感染のリスクもあるからって言い訳をつけて歯医者は避けていました(だいたい誰が歯医者になど行きたいものか!?笑)。やはり歯医者もコロナ感染予防は徹底していて、患者数の制限、診察前の体温チェックに問診、そして「歯科治療の結果、コロナに感染してしまったとしても責任は問いません」という同意書にサインをしなければいけません。こういうのを見ると、コロナ禍になって以来、日常って変わったよな・・・と暗い気持ちになってしまいます。というか、私の暗い気持ちはそもそもコロナだけではないんです・・・ここ、歯医者にいること自体で私の気分はすでにどん底なんですよ!なぜなら私は歯医者大嫌いだからです(涙)
思えば、私の人生は歯との戦いであった・・・。親知らずを4本抜いた20歳の夏、ドライソケットにかかってしまい(歯を抜いた後の傷が埋まらなくて神経がモロだし状態)、激痛に襲われ、でもそれが週末だったため歯医者は休業中。寝ることもままならない痛みの中、真夜中にタクシーに乗って病院の緊急外来に駆け込んでは痛み止めを貰った日々(しかも座薬!)。おまけに週末明けの月曜から友達と温泉旅行を計画していたため、直前キャンセルすることも出来ず激痛の中「城崎温泉」に出発。外湯巡りで有名な城崎温泉の7つの温泉を堪能できたのは良かったものの、ドライソケット中の入浴は絶対にやめてください!(誰に言ってるんだ?過去の自分に?)入浴で体が温められて痛みがより一層悪化します。外湯に入るたびに脂汗が出るくらいの痛みに襲われるので、仕方なく座薬を入れる・・・そして次の外湯に入って、また座薬を入れる、そして次の外湯でまた座薬・・・を繰り返し、外湯7つ巡りならぬ座薬7つ巡りの拷問を味わったのでした。あ〜あれは今思い出しても辛かった。
もちろん歯に関わる問題はそれだけではなく、虫歯になったりも当然あり、さらにカナダに来てからは歯医者の勧めで歯科矯正する事にもなったのですが(北米って歯並びにこだわるよね・・・って言うかビックビジネスになってるよ)、私はインビザラインっていう、なんて言うかマウスピースで歯並び変えていくっていうやつを選んだんですが、これがまぁ〜時間がかかるったらありゃしない。最初は1年くらいで終わりますって事だったのに、結局3年半もかかるほど私の歯並びは悪かったのでした。でもこのインビザラインはお勧めです(あ、私、別にインビザラインからお金もらってないですよ 笑)。歯列矯正始めた最初の3ヶ月はマウスピースに慣れなくて痛みもあったものの、3ヶ月以降は痛みも感じず、おまけに基本食事時以外はマウスピースをつける事になってるので間食が減って減量にも成功。もちろん歯並びも確かに北米ぽくなって見た目は良くなったかもね(っと北米の歯列矯正ビジネスに魂を売ってしまった私は思うのでした)。それでもその3年間、歯科医からの「う〜ん、おかしいな〜。なかなか予定通り歯が動かないね〜」っていう唸り声を聞くたびに、大丈夫か?ちゃんと治療できてるのか?歯が全部抜けたりしないだろうね!?という不安感に晒され続けたのでした。これも心配性の私には辛かったな〜。
今から思えば、もっと若い時から歯に意識を向けといたら良かったな〜と、みんな年を取ると愚痴る後悔を私も感じる今日この頃(っていうか歯医者にいる今日)なのですが、歯科衛生士のお姉さんにゴシゴシと歯の汚れを取ってもらって、グイングインと歯を磨いてもらったら、「お〜!」私の歯も見違えるようにピカピカになったのでした。やっぱり定期的なクリーニングって大切だね。でもそれだけで終わらないのが歯医者の嫌なところ。その後、X線をとってもらってチェックしてもらったら・・・やっぱりあった歯の不具合。過去に行った被せ物が外れかかっているから、新たな被せ物が必要だとか。あ〜あ、また治療だよ(涙)。お金もかかるし・・・・
さて歯科治療費についてなんですが、私は職場からExtended Healthと呼ばれる民間の健康保険を福利厚生の一環として払ってもらっていて、これによって歯科治療費用のそこそこ(100%ではない!)がカバーされています。それでも大きな治療(例えば歯列矯正)なんかは自腹分も大きくなるので結構な痛手です(涙)
ところで私の「カナダでソーシャルワーカー」を熟読(?)されている皆さんなら、もうすでに疑問を持たれたんじゃないでしょうか、この歯科治療費について!
そうですよね、カナダは基本医療費は無料!病院での治療には一切のお金がかからない事は
過去に何度もお話しています。ところが・・・・そこには歯科治療は入ってないんですよ!!!つまり歯科治療は全て基本は自腹。
これは大変な事ですよ。特にソーシャルワーカーにとっては。
実際、カナダの医療ソーシャルワーカーが患者さんから相談される問題トップ7に入るのがこの歯科治療の問題。低所得で生活保護や障害年金をもらっている患者さんは、州からExtended Healthが支給されるので最低限の歯科治療に関してはサポートしてもらえますが、困るのは中間層の人たち・・・生活保護をもらうほど収入は低くはないが、でも中流階級(って言葉は好きじゃないけど)ほどの収入はない患者さん達にとって、歯科治療費は重くのしかかり、その結果、歯科治療を放棄してしまう人たちも多いのです。しかし、最近では、歯の健康と体の健康との密接な関係が明らかになってきて、例えば、歯・歯茎の炎症(歯周病)は肺炎、心臓病、脳梗塞などのリスクも上げることが分かってきました。また糖尿病の患者さんは歯周病になりやすこともあり、糖尿病から歯周病になりそれが今度は心疾患や肺炎に繋がる・・・といった悪循環にもなり、そうなると歯科治療が出来ないことによって、患者さんの健康状態がますます悪化するという事にも。そういう中で、歯科治療に対する州・国からのサポートが全くないと言うのは困りものです。とくに子供にとってはさらに深刻な問題です。
それに加えて、歯科治療がプラーベートビジネスという事もあって、歯科治療費って本当に高いんです。さっき低所得の人は大変だ!みたいに言ったのですが、実際は一般的な中所得層であっても歯科治療費を全額自腹で負担するのは簡単なことではありません。家族が多ければ多いほど負担も大きくなり、年間歯科治療費が50万、100万を超えるなんて事も珍しくはありません。そういう事情なので、カナダではExtended Healthを福利厚生で提供する会社も多いのですが、しかし、全ての会社がExtended Healthを提供してくれるわけではないので、そういった資源を持っていない人達にとっては歯科治療というのは後回しにされてしまうのです。例えそれがゆくゆく健康被害を及ぼしてしまうとしても・・・
じゃー医療ソーシャルワーカーとして何ができるのか?
う〜ん、これ大変に難しい問題です・・・が知恵を振り絞るしかありません。
こういう時はソーシャルワーカーがそれぞれの資源を共有し合います。例えば、それぞれが知っている格安で歯科治療をしてくれる歯医者をリストにあげたり、歯科大学や歯科衛生士の学校で募集しているトレーニング用のボランティア患者応募を利用したり、チャリティー団体に支援を要請したり、と常に医療ソーシャルワーカー同士、情報を共有しあって現在進行形でこの歯科治療問題にあたっています。ただ現在のコロナ禍のせいで、歯科大学での治療が中断したり、歯医者が患者数を制限したりした結果、歯科治療を受けられない患者さんが急増しています。歯に不具合があるのってすごく辛い事だと私も分かるのでなんとかしてあげたいのですが、とにかく資源が少なくてどうしようもありません。なんでカナダでは歯科治療が健康保険に含まれてないんだぁ〜!と日本の保険制度を知っている私としては叫ばずにはいられません。この点では日本の医療保険制度に完全に軍配があがります。日本の皆さまも歯科治療が保険でカバーされている事に感謝しましょうね(?)。
こんな風に改めて考えてみれば、半年に一回のクリーニングでさえ行きたくないと思ってしまう歯医者嫌いの私なのですが、しかしそこはExtended Healthでカバーされている恵まれた身。うだうだ文句言わずに、むしろ感謝して歯科治療を受けに行けよ!と思うのです・・・が、やっぱり歯科治療は気が重い。本当にもっと前から今みたいに小まめにフロスしたり歯を磨いたりクリーニングしとけば、こんな目に遭わなかったのにな〜と新たな問題が歯科医によって発見されるたびに思うのでした。いやいや贅沢をいうんじゃないシンペー!!!
おわり
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