腎臓ソーシャルワーカーとはなんぞや?

正月三が日がないカナダでは、今日1月2日から仕事はじめです。気分新たに緊張の面持ちで出勤しましたが、私の職場である病院付属の腎臓透析科の患者さんはいつも通りの様子で一安心。冬場は突然お亡くなりになる患者さんも多いので、連休明けなどはけっこう気が抜けないのです。


さて私の現在の職名はRenal Social Worker。日本語に直訳すれば腎臓ソーシャルワーカー。いったい腎臓ソーシャルワーカの仕事とはなんぞや?と日本では聞きなれない職名に疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。そこで今日は腎臓ソーシャルワーカーの仕事を自分の経験と偏見に基づいて説明してみたいと思います。


私の勤める腎臓透析科では三種類の透析方法を提供しています:1)血液透析、2)腹膜透析、そして3)在宅血液透析。1)から3)の透析治療それぞれに、腎臓医、看護師、栄養士、薬剤師、そしてソーシャルワーカーからなる医療チームが組まれてます。私が働いている血液透析科にはソーシャルワーカーが2名、腹膜透析科にもソーシャルワーカーが2名、そして在宅血液透析科にはソーシャルワーカーが1名在籍しています。


腎臓ソーシャルワーカーの基本的な役割は、患者さんの透析治療への適応を手助けし、腎臓病と長く付き合っていくための社会的、心理的、財政的サポートを提供することです。ただ、それぞれの透析方法によって患者へのケアも変わってきます。例えば、腹式透析や在宅血液透析は、自宅で自分で透析を行わなくてはなりません。ですので、ソーシャルワーカーも患者さんの家での環境を整えたり、また患者さん自身が自分で透析をする意思・能力があるかの診断もしなければなりません。さらに、透析によって患者さんが直面する問題を医療チーム内で提起したり、患者さんを励まして透析へのやる気を出させたりすることも重要な仕事の一つとなります。


私が働いている血液透析科は外来で、患者さんが週に3回透析を受けに来ます。朝、昼、夜、そして夜から朝にかけての4つのスケジュールがあり、約200人ちかい患者さんが透析を行っています。それに加え、ここの透析科は病院付属なので、腎不全で入院された患者さんも病棟から送られてきます。血液透析科における腎臓ソーシャルワーカーの重要な仕事TOP3はズバリ:

1)交通手配(透析に通うためのバスの手配)

2)心理サポート

3)アドバンスケアプラニング(終末医療についての事前話し合い)

のこの3つだと私は思います。

え?交通手配がTOP3の最初に入るの!?とびっくり(がっかり?)されましたか?私も仕事を始めた時に???って思いましたが、これがまた馬鹿に出来ないのです。この交通手配については後日また詳しく書きたいと思いますが、この交通手配なくして腎臓ソーシャルワークの仕事は語れないのです(涙)。


2)の心理サポート、これもとっても大切です。腎臓病はなかなか自覚症状がないので、気が付いたときにはもう腎不全になっていた、というケースも多くあります。慢性腎不全になってしまったら、腎臓機能は移植をしない限り戻ってきません。そのため、突然腎臓病になってしまった患者さんはなかなか透析への心の準備が出来ません。そんな患者さんの精神的ショックを受け入れ、励まし、悩みを聞く。とくに透析に慣れるまでの3ヶ月間は、まめにカウンセリングをすることが大切です。


うちの透析患者さんたちは、複雑な病状を抱えている人たちが多いので予後もあまりよくありません。平均して3年くらいで亡くなられる方が多くて、私は5年前からこの透析科で働き始めたのですが、その当時からの患者さんは今では2割くらいしか残っていません。そんな厳しい現実と向き合うために、ソーシャルワーカーは積極的に患者さんとアドバンスケアプラニングのお話をします。アドバンスケアプラニングとは事前に患者さんと、どのような治療を受けたいか、受けたくないか、どんな状況になったら延命治療を中止したいか、などのお話し合いをして、患者さんの意思決定能力がなくなった時でも、患者さんの希望にあった治療をするための計画です。ソーシャルワーカーは、アドバンスケアプラニングの話し合いを通して、患者さんに生きるとと死ぬことについて前向きに考える機会を与え、また終末医療への準備をすることによって患者さん(そしてご家族)の心理的負担の軽減に努めます。このアドバンスケアプラニングについてはまた別に詳しく書きたいと思います。


この他にも、生活保護・傷害保険の申請、介護サポートの相談や委託、治療におけるクレームの処理、医療スタッフ間の喧嘩の仲裁(笑)など、いろいろやることがあって、毎日充実(?)した日々をすごしています。こんな腎臓ソーシャルワークへの質問などありましたらお気軽にどうぞ!


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