たかがバス手配、されどバス手配

昨日の記事の「腎臓ソーシャルワーカーの仕事TOP3」で、堂々の1位に輝いた交通手配(バス手配)について語りたいと思います。これ長くなるかも・・・


医療ソーシャルワーカーとして血液腎臓科に配属になったその日、先輩から最初にもらったのがハンディーダート(Handydart)の電話番号でした。ハンディーダート(Handydart)とは、片道$2.75(250円)で患者さんを自宅と病院とに送り届ける乗り合いバス・タクシーを運行している会社です。

こんな感じの、かわいいロゴとバスを運行しているハンディーダート、でもこれがなかなかの曲者で、ソーシャルワーカーたちを苦しめる存在にもなっているのです。


私が働いている病院は、3つのバンクーバー近郊市をカバーしていて、半径にすると約20km圏内に住んでいる患者さん達の治療をしています。病院付属の血液透析科の患者さんも、この圏内から通ってくるわけですが、誰もが車を運転できたり、公共機関を使って病院に来れるわけではありません。むしろほとんどの患者さんは、腎臓病と透析による慢性疲労のために、動くのもやっとな状態です(特に透析治療終了直後など)。また家族も毎回患者さんを病院に届けるのは大きな負担で、頼れる家族・友人のいない患者さんも多くいます。タクシーを使うにしても、10km以上の距離を往復で週3日もタクシーを使ったらすぐに財政破綻です。そんなわけで、多くの患者さんはこのハンディーダートの乗り合いバスで透析科と自宅を往復しています。


このハンディーダート、そもそもは市営のバス会社が運営していたのですが、数年前になぜかアメリカの会社に売り飛ばされてしまったのです。なので、ハンディーダート・・・営利企業なんです。顧客はお年寄りと障害者なのに、営利目的で運行するハンディーダート。そもそもこの黒い感じが嫌なのですが、それに加えて営利企業になってしまったためか、バスの本数も大きく減らされて年々使い勝手が悪くなるいっぽう。でもハンディーダートがなければ透析に来れない患者さんも一杯いる。そして透析に来なければ死んでしまう。でもバスがない・・・この葛藤に巻き込まれるのが腎臓ソーシャルワーカーなのです。


だいたいそもそも病院も医師も看護師も交通手配を甘く見てんじゃないの!?と感じるときが多々あります。というのも「ソーシャルワーカーさん、今日からこの患者さん透析だから交通手配よろしく!」「え?バスがないの?なんで?透析しないと患者さん死んじゃうんだよ?」「あ、そうそう、この患者さんストレッチャーでしか動けないから」なんてことを医師・看護師からさらりと言われるからです。まず、第一に(怒)、ハンディーダートは当日予約は基本NG。スタンバイでしか受け付けてくれません。つまり前日までに予約をするか、当日は空席のある場合のみ受け付けてくれます。第二に(怒)、透析に来なければ患者さんが死んじゃうのはソーシャルワーカーだって分かってます。でもバスがないのはソーシャルワーカーの責任ではなくハンディーダートの問題でしょ!?そして第三に(怒)、ハンディーダートは車椅子までしか受け付けてくれません。ストレッチャーでなきゃ移動できない人はNG。また病状が安定してないとダメ。そうなんです、結構NG事項が多いんですよハンディーダート。


こんな風に書きながらつい思い出し怒りで熱くなってしまいましたが、カッカイライラしながらもなんとか解決方法を見つけないといけません。患者さんも困ってるんだし。ではどうするかと言うと・・・まずは簡単なところから当たっていきます。

  • 患者さんの家族・友人に送り迎えを頼んでみる
  • 患者さんの透析スケジュールを変えて、ハンディーダートのバスがある時間帯に変える
  • ハンディーダートに直談判して、患者にバスを出すよう要求・懇願する
  • 病院のマネージメントに患者さんの交通費(タクシー・救急車)を出してくれるよう頼み込む
  • 患者さんに政治家事務所にいって現状を訴えるよう促す(これ、即効性はないけど効く時があるんです。でも公的に雇われているソーシャルワーカーがこれを直接やるとクビになっちゃうから、あくまでも患者さんに自主的にやってもらうんです)

上記のどれもダメだった場合・・・一体どうすればいいんでしょう???

ラッキーなことに、いままで上記の全部がダメだったことはないのですが、いつかそんな事態が起きるんじゃないかとヒヤヒヤしながら交通手配をするのが、この仕事のきついところです。今出来ることは、とにかくハンディーダートとの話し合いと、市・州政府への呼びかけです。そもそもハンディータートを営利企業に売り払ってしまうことが諸悪の根源!腎臓ソーシャルワーカーの仕事を難しくさせるハンディーダート許すまじ!


腎臓ソーシャルワーカーの格言

「腎臓ソーシャルワーカーの仕事は、ハンディータートに始まり、ハンディーダートに終わる・・・」


以上、腎臓ソーシャルワークの話でした



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