医療ソーシャルワーカーの仕事9 出世の花道編


医療ソーシャルワーカーの仕事シリーズも、今回がいよいよ最終回です。最後を飾るテーマーは「ソーシャルワーカーと出世の花道」。ソーシャルワーカーと出世なんて、とっても相反する言葉のような気がしますが・・・いやいやそんなことはないんですよ。カナダの医療業界では、野心(?)のあるソーシャルワーカーだってちゃんと出世することができるんです!では、どうやってソーシャルワーカーが出世の道を開いていくのかを見ていきましょう。



カナダのそれぞれの病院にはSocial Work Practice Leaderと呼ばれるチーフリーダーが置かれ、医療ソーシャルワーカーの管理、監督、指導を行っています。このチーフリーダーには、医療ソーシャルワーカーの経験者が選ばれます。具体的な仕事内容は、ソーシャルワーカーの採用、教育、勤務評定(冷汗)、スケジュール調整、複雑なケースの相談・アドバイス、さらにはソーシャルワーカーの配置要請・予算要求(これ、とっても大事!)などを行います。もちろん給料も現場のソーシャルワーカーより多くもらえます(多分2割り増しくらいか?)。まずは、このチーフリーダーになることが、出世を望むソーシャルワーカーの第一歩となるのです。



さて現場のソーシャルワーカーにとっては、どんなタイプの人がチーフリーダーになるかは死活問題です。なんと言っても直属の上司になるわけですから。まぁ、これはどの仕事、どこの職場でも同じなんでしょうけど、「親と上司は選べない」とはよく言ったものです。私もかつてマイクロマネジメント(過剰干渉?)タイプの上司にあたったことがあり、勤務評定のたびに自分の書いた医療カルテを25件以上見直しさせられたことがありました。これ、ハッキリ言って凹みますし、毎回の勤務評定が恐ろしくて医療カルテを書く手もブルブル震えますよ。でもお陰様で、医療カルテの「いろは」をきちんと学べたことは収穫でした。現在のチーフリーダーは、大らかであまり干渉をしないタイプの人みたいで、ありがたいことにまだ恐怖の医療カルテチェックはありません。「やっぱり上司に持つならこっちのほうがいいよね~」なーんて思うのですが、実際こんな私がチーフリーダーになったら、超マイクロマネジメントになって、周りから嫌われる上司になっちゃたりするんだよな、あはは。



チーフリーダーよりもっと上を目指したいソーシャルワーカーにはRegional Social Work Practice Leader 、地域総括ソーシャルワークリーダーという道もあります。この医療ソーシャルワーカーにとっての大ボスは、医療ソーシャルワークに関する規則・規定作り、保険局内での医療ソーシャルワーカーの啓蒙活動(仕事を増やせ!っていう)、そしてチームリーダーの管理・監督業務を行います。この大ボスのポジションはそれぞれの保険局に一席しかないので、かなりの競争です。ちなみに給料は?たぶん、けっこうお高いんだと思いますよ(笑)。



ソーシャルワーカーの出世の道がこれだけで終わらないのがカナダの医療業界のいいところ。総括リーダーよりも上に立ちたいという人には、病院の部長職というのもございます。日本だと、病院の部長職といえば医者の役職というイメージがあると思います。「白い巨塔」や「ドクターX」などその良い例です。ところがカナダでは、部長職に医者が就くことの方が少ないように思います。例えば、私の働く病院の血液腎臓透析科の部長は看護師ですし、腹膜透析科の部長は作業療法士です。さらに、腎臓透析科統括部長はなんとソーシャルワーカーです。また同僚の中でも、一昨年、精神科病棟の部長になったソーシャルワーカーがいました。実際、病院における部長職の多くは看護師の資格をもつ者が就いていて、病院の医院長や保険局長などの、いわゆるCEO職は、ビジネスの世界から引き抜いてきたビジネスパーソンがその職に就くことが多いのです。つまりソーシャルワーカーでも、マネジメントに興味のある人ならば、部長職、またそれ以上のさらなる高みを目指すことが出来るというわけです。



まぁでも、ここまで上ってしまえば、もはや医療ソーシャルワーカーの仕事の範疇ではありませんよね。ただ個人的には、もっともっと多くの医療ソーシャルワーカーには出世してマネジメント職について欲しいと思うのです。ソーシャルワークの基本理念は「草の根運動」です。現場で声を合わせ、社会を変えて行く。私のこの理念が揺らぐことはありません。しか~し、現実の医療の世界では、なかなか現場の声は上には届かないのです。それは医療ソーシャルワークをすればするほど実感する現実です。これを少しでも変えるために、現場を知っているソーシャルワーカーに政策決定ができる地位について欲しいのです。カナダで看護師の地位が向上し力が強くなった一因に、看護師の部長職・マネジメントへの関わり・進出が大きく上げられると私は考えます。ソーシャルワーカーの地位は、医療システムにおいては残念ながらまだまだ低いと言わざる得ません。でも、医療ソーシャルワーカーの仕事は患者さんにとっても、また病院にとってもなくてはならないものなのです。だからこそ、いちソーシャルワーカーの出世は、医療ソーシャルワーカー全体にとっても大きな意味のあることなのです。またソーシャルワーカーの地位が上がることは、ソーシャルワーカーのみならず、ソーシャルワーカーが関わる患者さんにも大きな恩恵があるのです。



・・・では、私が出世の道を歩むのかって?うーん、それはどうでしょう。そもそも出世がしたいと思っていたらソーシャルワーカーにはなっていなかっただろうし。あんまり興味ないかもね・・・

そうなんです!これなんですよ原因は!ソーシャルワーカーになる人には、出世欲がない人が多いんです。個人的には賛同できるんですが、でもそれじゃーダメなんです!出世しないといけないんです!

とは分かっているものの、「やっぱりマネジメントには興味ないし、それに医療ソーシャルワークの仕事が好きなんだからさ」となって、永遠に自分自身の中で解決しないグルグル回り続ける困った問題(?)です。だれか、出世に興味のある人、カナダでソーシャルワークしませんか?

さてこの医療ソーシャルワーカーの仕事シリーズを通して、カナダの医療ソーシャルワーカーの仕事をとりあえず考えられるだけ載せてみました。でもきっとまだまだあるはず。この仕事外してますよ!ってのがあったらぜひ教えてください。また日本での医療ソーシャルワーカーの仕事が聞ける機会があったらいいですね。それでは、とりあえず完ということで。

カナダでソーシャルワーカー Social Work in Canada

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