医療ソーシャルワーカーの仕事10 番外編


あれ?このシリーズ前回で終わったんじゃなかったの?っと言った声も聞こえますが(汗)、あの、せっかくなのでキリのいい10回目で終わらせたいと思います。いえ、本当に、おわりおわり詐欺ではありません(笑)。過去9回にわたり数々の医療ソーシャルワーカーの仕事を見ていきましたが、今回この番外編では、どうやって医療ソーシャルワーカーが、自分にあった仕事を見つけていくのか?についてお話したいと思います。



一口に医療ソーシャルワーカーと言っても、ご存知の通り病棟からケースマネジャーに至るまで様々な職種があり、それぞれ仕事の役割、流れ、焦点、ペースなど異なります。また、各々の病院・クリニックによって、人間関係、ソーシャルワーカーの立ち位置、チームワーク、そして仕事量なども違います。たくさんの選択肢がある中で、一体どうやって自分にあう仕事をソーシャルワーカーたちは見つけるのでしょうか?



第一に、人には向き不向きと言うものがあります。例えば、人とつながって話をじっくり聞くのが好きな人もいれば、ゆっくり話を聞くよりも処理できる問題をテキパキとこなすのが好きな人もいます。前者の人は、クリニックや透析科のような外来が向いているかもしれません。反対にER(緊急外来)のような次から次へと患者が運ばれてきて、つねに優先順位を即決しないといけないような仕事はキツイと感じるかもしれません。後者の人は、まるっきり逆にERの仕事の方にやりがいを感じるかもしれません。また、職場の人間関係に縛られるのが苦手な人は、おおきなチームで働く病院よりも、個人の采配で働くことが多いクリニックソーシャルワークやケースマネジャーなどの仕事の方がやりやすいと感じるかもしれません。このように、まずは自分の得意なこと、苦手なことを理解することが、仕事を選ぶ上では大切となってきます。



ちなみに私にとっては「ペース」と「チームワーク」が仕事を選ぶ上での重要なキーワードで、自分のペースが乱されて、チームワークがバラバラな職場では、自分の(限られた)能力を最大限発揮することが出来ません。ですので、ERのような常に緊急事態な職場は絶対にNGなのです。でも同時に、「食わず嫌い」で仕事を選ぶのも、自分の(秘めた)能力を無駄にしてしまう可能性もあります。では、どうやって自分の職場は「ここだ!」と決めることが出来るのでしょうか?その答えは、Casual Social Workerと呼ばれる非常勤ソーシャルワーカーの仕事にあるのでした。



そもそも、カナダの医療ソーシャルワーカーは正社員(permanent)、嘱託社員(temporary)、非常勤(casual)とに分けられます。ここで言う正社員とは厳密には「特定の職を正式に得た職員」と言う意味で使われます(分かりにくいかも・・・)。例えば、私は血液透析科のソーシャルワーカーという職に、正式採用された職員として働いているので正社員と呼ばれます。またパートタイムの仕事でも、正規に採用された場合は正社員と呼ばれます。つまり労働時間数ではなく、正式採用されたかどうかが「正社員」とみなされる要素となるわけです。それに対し嘱託社員は、正社員が「産休」「無期限病欠」「無給休暇」などによって長期に渡って欠勤する穴埋めとして、6ヶ月、12ヶ月、最長2年単位の契約で一時的にその職に就く職員のことを指します。そして非常勤は、正社員、嘱託社員の「休暇」「病欠」の穴埋めとして、短期的(1日から最長3ヶ月の間)その職をカバーする職員を指します。



カナダで医療ソーシャルワーカーを目指す場合は、まずこのCasual Social Worker、非常勤からはじめることが一般的です。なぜかと言えば、正社員登用への競争は激しく、組合での規則で基本的には勤続年数の多い職員のほうが正社員登用に有利に働くからです。そのため、正社員をめざす非常勤および嘱託職員は、コツコツまめにシフトをとって勤続時間・年数を稼ぎ、その時を待つのです。ただ、給料体系は正社員、嘱託、非常勤とに関わらず、同一であり、また福利厚生も一定の年間勤務時間数をクリアすれば、嘱託および非常勤でももらうことが出来ます。このような理由で、正社員ではなく、時間に融通の利く非常勤を選ぶソーシャルワーカーも多数います。



さて、この非常勤(Casual Social Worker)がなぜ自分にあった職場探しの役に立つのかと言うと、それは色々な職場を試験的に体験できるからです。非常勤は、自分の働きたい日だけ働くことができ、また職場もある程度は選ぶことが出来ます。例えば、ERの勤務体験をしたければ、「今週は3日空いていて、出来ればER勤務を希望したいのですが」とリクエストを出すことも出来ます。ただし、シフトは非常勤職員の勤続年数順に振り分けられていくので、必ずしも希望のシフトが取れるわけではありません。それでも、この非常勤で色々な職場を体験することで、自分がどの医療ソーシャルワーカーの仕事に向いているか、そしてどの病院・クリニックのチームと相性がいいのかなど、具体的に理解することが出来るのです。さらに、非常勤でさまざまな経験を積むことにより、医療ソーシャルワーカーとしての知識も深まり、昔だったら選ばなかったような仕事にもチェレンジする勇気と自信もつくようになるのです。



またもう一つ自分にあう仕事を見つける方法としては、大学での実習があります。ソーシャルワーク(社会福祉)学部時に約半年、そして修士時にも約半年、病院実習をうける機会があります。この実習を通して、医療ソーシャルワーカーとしての基本的知識を身につけ、また様々な病棟を体験することが出来ます。実際、医療ソーシャルワーカーの採用に際しては、病院での実習経験または臨床経験が求められることが多いので、病院実習は大変役に立ちます。私も学部と修士時との2回、病院で実習しました。実習では手取り足取り教えてくれるので、自分のペースでソーシャルワーカーの仕事を学ぶことができました。またそれ以上に、実習を通して良くも悪くもソーシャルワーカーの実態(本性?)を知ったのです・・・(これはまたいつかお話します へへへ)。



ほとんどの医療ソーシャルワーカーにとって「ここだ!」という職場を見つけることは、実は結構むずかしくて、多くのソーシャルワーカーは職を転々とします。でも、これは良いことだと思います。同じ職場に長くいれば、仕事内容もチームも患者さんも熟知し、毎日の業務はどんどんと楽になっていきます。ただ同時に、刺激や新しい知識といったものも少なくなり「飽き」が来てしまうこともあります。そういう中で、3年、5年ごと職場を変えて、また新しい知識や経験を積みたくなる医療ソーシャルワーカーの気持ちは、透析科にすっかり馴染んでしまった私にもよく分かります。でも、ぬるま湯って気持ちがいいので、出るときの踏ん切りとかタイミングって難しいんですよね・・・一応、来年あたり何か新しいことをしようとは思っているのですが。さてどうなるでしょう?(笑)

医療ソーシャルワーカーの仕事シリーズ(完)!

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