ソーシャルワーカーと南京虫の恐怖
みなさん、南京虫って知っていますか?Wikiによると正式名称はトコジラミ。英語ではベットバグ(Bed Bug)と呼ばれるこの昆虫。その名のとおり、ベット・床(とこ)に潜んで人間の生き血をすすり、それを栄養に産卵・孵化。一匹の南京虫が3ヶ月で産み付ける卵の数はなんと1000個。うげげげ、書きながらゾッとするこの南京虫(通称ベットバグ)が今バンクーバーで大繁殖・大ブーム・大問題を引き起こしているのです。
The Bed Bug Registryというサイトのこの地図を調べてみると、赤い点々があるのが分かります。これはバンクーバー市内でベットバグの被害にあった住宅を指しているのですが、真っ赤に染まった地域がありますよね?ここは、バンクーバーの中心部、通称ダウンダウンと言われる繁華街なのですが、そこのほとんどの住宅がベットバグの被害にあっているのが、お分かりいただけただろうか・・・?
実は私もこのダウンタウンに住んでいるのですが、ラッキーなことに1月20日現在において、まだベットバグにお家でお目にかかったことはないんです。それでも毎日近所のどこかの家で住人がベットバグに襲われてることは確かで、そう考えると夜も安心して眠れません。
そもそもこのベットバグ、一体なにがそんなに恐ろしいのか?それはその繁殖力にあります。例えば、もし、あなたが一匹のベットバグを自宅で見つけてしまったとしましょう。それはつまり1匹x100倍のベットバグがあなたの家に潜んでいるということになるのです。100匹以上の吸血昆虫と生活する毎日なんて想像できますか?そこで、そんなベットバグと不幸にも同居することになってしまったあなたに贈る
「南京虫を退治するための10の秘訣」で、対処法を学んでいきましょう。
- すべての衣類をゴミ袋にいれましょう
- すべての衣類を熱水で洗濯するかドライクリーニングにかけましょう
- すべての家具を家から外に出しましょう
- シーツは捨てましょう
- ベットも捨てましょう
- 家のカーペット・フローリングに掃除機をかけましょう
- 家中に害虫除去の薬を散布しましょう
- 家の隅々まで温熱スチームを当てましょう
- すべての家具にも温熱スチームを当てましょう
- ↑なこと自分じゃできねーよ!って方は専門業者にお願いしましょう
って風に、いかに南京虫除去が手間も、時間も、お金もかかるものかお分かりいただけると思います。もちろん素人の手に負えるものではないので、結局はみんな専門の業者に害虫駆除を頼むことになるのです。
たとえ自分の家にベットバグがいなくても、お隣さんでベットバグが見つかれば、あなたも人事ではありません。なぜならベットバグは50mくらい平気で這うことが出来るからです。こうしてバンクーバー市民はベットバグ、南京虫の恐怖におびえながら生活を送っている今日この頃なのです。
さて、このベットバグ。どうやって自分の家にいるのかどうか確認することが出来るのでしょうか?そこで次は:
「もしかしている?南京虫を見破る5つのポイント」
- 真夜中の睡眠時に、何者かに血を吸われている気配がする
- 朝起きると、腕や足に赤い斑点があり、かゆい。
- シーツや枕カバーに、糞(自分のものではない)や血痕が付いている
- かび臭いにおいがする
- 南京虫の死骸を見つけた!
とくに最後のポイントは決定的です。ベットバグは夜行性なので、深夜寝静まったころに活動し、昼間はベットの隙間に隠れるのが習性です。サイズも5ミリくらいなので結構大きいんですよ(一度、患者さんが連れてきたのを見たことある)。
ソーシャルワーカーにとっても、仕事上このベットバグは大きな問題となります。病院は不特定多数の人が出たり入ったりするので、当然の如くベットバグを連れてくる患者さんもいます。ただ、他の患者さんに移すわけにはいかないので、対処を取らなくてはなりません。通常は隔離と害虫駆除で対応します。例えば病棟の患者さんだったら個室へ、腎臓透析の患者さんだったら3つある個室の1つへ入れて、ベットバグが外に出ないようにします。ただ、ベットバグ大流行の今、ベットバグ同伴の患者さんが3人以上同時に透析にくることも珍しくありません。こうなると個室も一杯になり、しょうがないのでベットバグ同伴の患者さんだけを一角にまとめるような応急処置になりますが、50m這い進むことのできるベットバグなので完全に予防できる訳ではありません。
このような状況でソーシャルワーカーは、出来るだけ早く患者さんの家からベットバグが除去されるよう、害虫駆除のお手伝いをします。と言っても、ソーシャルワーカーが自ら患者さん家でベットバグの駆除をするわけではなく(当たり前か?)、安く害虫駆除をしてくれる業者を探したり、駆除費用が捻出できない患者さんには基金を集めたり、アパートの管理人にかけ合ったりして、とにかく少しでも早く害虫駆除が出来るよう働きかけます。また他の患者さんにベットバグが移らないように、患者さんやスタッフに注意を呼びかけるのもソーシャルワーカーの役目です。
ただ、この南京虫。けっこう簡単に移してしまうんですよ・・・私がかつて実習の一部として、バンクーバーのスラム地区で依存患者さん宅のアウトリーチをしていた時、担当の看護師から「ベットバグはねー、靴で卵を踏んじゃって、それが家のカーペットの中で孵化しちゃうから、卵踏まないように気をつけてね」と忠告を受けました。それからというもの、患者さんの家を訪問するだび、ドキドキしながら忍び足のようにして歩いていましたが、でも良く考えたら、南京虫の卵なんか肉眼で見えるわけないだろぉー!ってことに気づき、バカバカしくなって気にしなくなりました。それでも時々、もしかして家に連れてきてないよね?って不安になるのが南京虫の怖いところなのです。
またベットバグを大量に服に潜めてくる患者さんもいたりして、肉眼でベットバグが動いているのを見ると、その日一日は体中が痒くなるようでたまりません。でもすべて全部「気のせい」心理的なものなのですが、これもベットバグ、南京虫のなせる業なのです。嫌なもんです。
結局のところ、南京虫に血を吸われることよりも、南京虫のせいで家中の家具を外に出したり、服を捨てたり洗ったり、害虫駆除期間中の滞在先を探したり、そういった諸々のことをしなければならないのが私にとっての一番の恐怖なのです。その手間を考えただけでゾッとします。そんな事態になったら引っ越しちゃおう!とアパート暮らしの私は決意するのでした。それにしても憎っくき南京虫。最近は害虫薬の利かない「スーパーナンキンムシ」なるものも登場してきたらしく、恐怖に怯える人間を差し置いて、ちゃくちゃくと進化を遂げる南京虫の強さに負けそうになるソーシャルワーカーなのであった。完
↑こんなに大きくはないけど、肉眼で見ると結構おおきいんですよ。
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