ソーシャルワーカー 海外での需要


カナダでソーシャルワーカーとして働く利点の一つに、カナダ以外の海外でも働くチャンスがあるという事があげられます。とくにイギリス連邦、Common Wealth Countries(コモンウェルス)と呼ばれる国々では、カナダでのソーシャルワーカー資格がそのまま認められることが多く、特にイギリスやオーストラリアなどからの求人募集が、カナダではよく見られます。



私も学部生の時(2003年ごろ)、イギリスから派遣会社が何社か大学に来て、ソーシャルワーカー学部の学生相手に、イギリスでのソーシャルワーク求人についてのプレゼンを行ったのを覚えています。プレゼンでの話だと、待遇もそこそこ良く、基本給の他にも、渡航費用や労働ビザ費用の負担、特別ボーナスの支給など、「イギリスで働くのもいいかもねぇ~」と当時、私の心も揺れ動いたものです。



でもよく考えてみれば、これ、とってもおかしな話です。ベテランのソーシャルワーカーをヘッドハントするならともかく、まだ右も左も分からないペイペイで経験値0の学生をイギリスに連れて行って働かせようなんて・・・イギリスではソーシャルワーカーの人手不足がよっぽど深刻なのに違いありません。では、なぜ人手が足りないのか?それはきっと待遇が悪いからに違いありません!派遣会社のプレゼンでは、ソーシャルワーカーの時給は$50以上(今の日本円では4500円くらい)と言われて、学生たちはワァーと盛り上がったのですが、でも当時のイギリスポンドとカナダドルの差は2倍、つまり1ポンドは2ドルだったのです。ということはイギリスポンドの時給では25ポンド・・・イギリスでの物価を考えると、それほど良い待遇とは思えません。いや、下手をしたらカナダでソーシャルワーカーとして働くよりも、生活の質は落ちるかもしれません。おまけに、よく仕事内容を調べて見らたら、案の定、Child Protection、児童保護の仕事なのでした。



ソーシャルワーカー業界において、児童保護ほど大変な仕事はないと言われています。私のクラスメートの多くも卒業後、児童保護の仕事に就きましたが、ほとんどはその後、医療ソーシャルワーカーへと鞍替えしています。BC州の児童保護ワーカーは約3年で辞めていくと言われており、昔からかなりの離職率で有名です。私が思うに、児童保護の仕事において一番きついところは、ソーシャルワーカーへの責任と負担が重たいわりに、所属するお役所組織からのサポートが少ないという点にあります。私の友人も児童保護の仕事をしているのですが、扱うケースは増える一方で、サポートは少なく、そしてもし深刻なケース(子供の死亡事例など)があった場合は、担当のソーシャルワーカーは徹底的に上司から取調べを受けて、組織から守られていると言うよりは責められているような気持ちになると言っていました。また、子供の保護案件では、裁判所に出頭することも多く、そのケースの担当者として裁判官に証言や陳情をしなければなりません。さらに大抵の子供は親から引き離されることを望みませんので(激しい虐待をうけていたとしても)、子供からも親からも恨まれるような、その損な役回りに、精神的にもしんどい思いをします。その結果、カナダのどの州でも児童保護ワーカーは不足していて、そのために一人当たりの担当ケースも増え続け、ワーカーのストレスも溜まり放題、離職も増え、そしてまたケースが増える・・・といった悪循環に陥っています。



恐らく、このような状況はイギリス連邦の国々でも同じなのでしょう。それでこのような国々からの求人募集はきまって児童保護の仕事になるのです。それでも、海外でソーシャルワーカーの仕事をするのは良い経験になるはずです。例えば、私のクラスメートの一人は、卒業後イギリスに行きました。イギリスの雨ばかり降る片田舎に派遣された彼女は、そこで児童保護の仕事をしました。仕事自体は大変だったものの、休日にはイギリスの名所を周ったり、ヨーロッパ諸国に旅行に行ったりとプライベートは充実して過ごせたようです。またその後一年ほどイギリスで医療ソーシャルワーカーとして働くこともでき、いかにカナダの医療ソーシャルワーカーの仕事環境が恵まれているかが分かったらしいです(それ本当かよ?笑)。



さて、最近CASW(Canadian Association of Social Workers)に掲載されたオーストラリアからの求人はなかなかの待遇です。

• 年収$90,000カナダドル!(800万円以上)

• 引越し費用込み

• 航空券費用込み

• 住宅が見つかるまでの一時滞在費込み

• 手厚い福利厚生


いやー、これだけ見ると、明日にでもオーストラリアに行っても良いような結構な待遇ですね。オーストラリアとカナダの物価もそれほど違わないのでお給料も良いです。さて肝心な仕事内容はSafeguarding Children and Young People ・・・やっぱり児童保護だったぁ~。おまけに、どこに連れて行かれるのか赴任先が書いてな~い。オーストラリアも広い国。とんでもない辺鄙な土地に飛ばされるかもしれないと思うとちょっと勇気がいります。カナダだって、極寒の北極に近い町で児童保護の仕事をすれば、ぶっちゃけ1000万円以上稼ぐことが出来るんです。でもマイナス50度の世界に飛び込む勇気のある人って一体どれくらいいるのでしょうか?(私は夏場の半年くらいならやってみたいと思いますが・・・)。オーストラリアだと逆に暑い砂漠地帯に飛ばされるのでしょうか?でもこの待遇だと、私もちょっと心が揺れます・・・



ただもう一つ日本人ソーシャルワーカーが気をつけないといけないのが「差別」の問題です。例のイギリスの片田舎でソーシャルワーカーをやったクラスメートは、その田舎町では人種差別が激しかったと言っていました。イギリスも、カナダも、オーストラリアも、大都市では人種、文化、性別、セクシュアリティの違い、多様性に寛容ですが、田舎は必ずしもそうだとは限りません。人口も少なく排他的な田舎町で、非白色系ソーシャルワーカーが児童保護の仕事をするのは、なかなかの兆戦だと私には思えますが、それはそれで面白い経験になるかもしれませんね(身の安全が確保されている限り)。私は自分のことを基本的には慎重派だと思っているのですが、時にアドベンチャラス(・・・無謀とも言う?)になる時もあるので、たまに出てくる海外でのソーシャルワークの仕事や、北極での仕事に、心がグラグラ揺れ動かされることがしょちゅうあります。



あ、それで思い出したんですが、私のベトナムでの国際協力の経験から、発展途上国支援の仕事でもソーシャルワーカー経験者は優遇されますよ!


このように、ソーシャルワーカーはその知識・経験を海外でもいかすことが出来るのです。でも、「うますぎる話」にはくれぐれもご注意を!(笑)

カナダでソーシャルワーカー Social Work in Canada

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