医療ソーシャルワーカーと統計作業


私たち医療ソーシャルワーカーは患者さんとの相談業務だけでなく、様々な事務業務も行わなければなりません。これは過去ログ「医療ソーシャルワーカーと書類業務」でも書いたのですが、その書類業務の一つに統計作業があります。統計作業は事務作業の中で、最もめんどくさくて、私が苦手とするものです・・・では医療ソーシャルワーカーの統計作業とは何なのか?について今回はお話しましょう。



まず皆さんに知って頂きたいのは、統計作業と私の数学力とはなんら関係が無い!ということです。確かに私は昔から算数が苦手で、でも道徳は得意な子供でした。それでソーシャルワーカーになったっんだ、と言うわけではないのですが、基本的にソーシャルワーカーに数学が得意な人はいません!(って言い切ってみた・・・だって大学のクラスメートみんな数学ダメダメだったもん)。しかし、医療ソーシャルワーカーの統計作業は、せいぜい単純な足し算をするくらいで、ソーシャルワーカーでさえも出来るよう簡単に作られているのです。じゃー何がそんなにめんどくさいのかって?それは、その細かな作業にあるのです。



医療ソーシャルワーカーは毎日、その日に扱った患者さんのケースそれぞれを統計プログラムに入力しなければなりません。まず患者さんのイニシャルを入力して、医療ソーシャルワーカーがどんな相談業務を行ったかをA~Cの種別に分けて入力します。A1が優先順位が最も高いケースとして分類され、その後A2,A3、と続き、最後のC3が一番優先順位が低いケースとして分類されます。って説明してもややこしくなるだけですよね。私も書きながら混乱しそうです。ですので↓に具体的な種別分類表を挙げてみました:



種別A(安全・リスクに関わる事柄)

A1:児童保護、成人保護、自殺・他殺願望、DVなど暴力被害、危険な状況

A2:薬物による危害

A3:精神障害による安全リスク


種別B(アセスメントとサポートに関わる事柄)

B1:心理・感情・社会・経済問題、クライシス、アドバンスケアプラン,死亡

B2:適応障害、孤独、家族問題、介護疲れ

B3:退院手続き、定期的なアセスメント


種別C(社会資源に関わる事柄)

C1:退院に関わる緊急事態

C2:カウンセラーの紹介、住宅資源の紹介、生活保護申請、障害手当て申請

C3:コミュニティー資源の紹介、宗教・文化関連援助、職業援助、介護資源の紹介



・・・とこんな風になってます。え、すっごい具体的で分かりやすいじゃん!って思った人は私の気持ち分かってもらえません(涙)。逆に、この項目を「うわ、読むの面倒くさ!」と読み飛ばしてしまったあなたは、私の気持ちがよく分かってもらえるはず。そうなんです、別に↑の種別に当てはまるように入力すれば良いだけなので、決して難しい事ではないんです。でも自分の関わったケースの一つ一つを終業間際に思い出して、どれに当てはまるかな~って統計プログラムの升目を埋めていく作業が苦痛なのです。さらに、自分の扱ったケースがどの種別に当てはまるか今ひとつ分からないことも多くて、結構イライラする作業になるのです。



それでは突然ですが、ここで皆さんにクイズです。以下のケースは↑のどの種別に当てはまるでしょう?


(問1)患者さんと透析中止と緩和ケアについての相談をした

(答え)これは死に関わる事項なのでB1ですね!


(問2)患者さんの透析科へのハンディーダート送迎バスの予約をした

(答え)・・・どれでしょうね。私も今ひとつ自信ないんですがC2ですかね?


(問3)うつ病の患者さんが腎臓透析を止めて死にたいとソーシャルワーカーに相談した

(答え)ううう、これはA1とA3とB1とで悩むところですが、うつ病ということで私はA3だと思うんですけど・・・みなさんどう思いますか?


(問4)患者さんとの日常会話

(答え)これだって立派なソーシャルワーカーの業務なんですよ!だからB2。笑


(最後)患者さんの家族から介護疲れの相談を受けて、ホームヘルパーの手配をした

(答え)これはB2でもありC3でもあるけど、優先順位でB2!



どうでした?みなさん答え合ってました?それとも面倒くさくて答える気にもならなかったですか?↑の種別表も見ないで、私の答えの欄だけを読んだあなた!私の統計作業に対する気持に共感できてますよ~(しつこすぎる!?笑)。考えてみてください、終業間際の「早くかえりたい!」って気持ちでセカセカしている時に、このチメチメした統計作業をしていると、もう本当にイジイジ・イライラしちゃうんですよ。おまけに、この種別入力の他にも、一つ一つのケースにどれだけ時間を費やしたか、そして相談業務以外の事務業務にどれだけ時間を費やしたかも入力しなければいけません。この統計作業自体がすでに事務作業の時間だっつーの!ってグチグチいいながら毎日この統計作業をする私なのでした。



さてこの統計作業どうしてやらないといけないんでしょう?そう思いませんか?私も、ずぅーとなんて時間の無駄なんだろう、こんな事に時間を費やすから、患者さんとの相談業務に時間が割けないんだぁー!とか文句タラタラしてたのですが、ある日ソーシャルワーカー部長から統計作業の意味を聞いて、シュンとしてしまったのです。彼女曰く:


「統計作業は、ソーシャルワーカーの仕事を維持し、ソーシャルワーカーの職員を増やすためには必要不可欠なものなんです。だから皆さんが、どんなケースを日々扱って、どれだけの時間を費やしているかを統計作業で入力することで、病院側に数字でソーシャルワーカーの重要性とニーズ、そして人手不足を強調・交渉することが出来るんです!」


そうだったのか・・・統計はソーシャルワーカーの重要性をマネージメントに啓蒙・交渉するためのものだったのか。納得。確かにビジネスの社会では数字が物を言います。いくら感情で訴えたって、数字がそれを支持していなければお金は出してもらえません。そういう意味では、病院経営だってビジネスなのですから、ソーシャルワーカーの数を増やして欲しければ、その根拠とニーズを数字で表さないといけないのです。



時間の無駄だと思っていた統計作業さん、ごめんなさい。これからはもっと真剣に、丁寧に、そして心をこめて統計作業をします・・・と言いたいところなんですが、やっぱり時間がかかり過ぎる!!!相談業務の後には、電子カルテを書かなければならず、相談業務満載の日などは就業時間までにカルテを書き終えるのでさえ一苦労です。その上、統計作業まで。でも統計作業は私たちソーシャルワーカーの輝かしい未来(=職員増)を達成するための命綱。あぁぁ、なんて悩ましい問題なんでしょう。結局、私はこの「しち面倒くさい」統計作業からは逃れることが出来ないという事実を受け入れなければいけないのでした。終わり。

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