造血幹細胞移植科での実習 ★(-1星)


ソーシャルワーク学部時代の2つの実習があまりにも素晴らしかったので、今回もガッチリ学ぶぞ~!!!と意気揚々と望んだ大学院での実習。実習先は造血幹細胞移植科。自ら進んで選んだ実習先というよりも、これしか残っていなかった、というのが正直なところでした。というのも、普通は一年詰め込みで大学院を終わらす野心的な生徒が多い中、私はのんびりと三年もかけて大学院を卒業しました。実習先を選ぶ時もそんな調子で優雅に振舞っていたので、気が付いた時には面白そうな実習先はすべて他の学生に取られ、残ってるのは造血幹細胞移植科だけ、という状況でした。「残り物には福がある」という諺もありますが・・・それはきっと残り物しか貰えなかった者への慰めの言葉に違いありません(涙)。だって誰も選ばないってことはそれなりの理由があるはずなのですから・・・


造血幹細胞移植科は、白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫の治療を目的とする病棟で、主に骨髄移植、造血幹細胞移植、化学療法を行っています。白血病の予後は割と良く、白血病は不治の病だと思い込んでた私は5年生存率が5割以上という事実をしって驚きました。それでも化学療法や骨髄移植による副作用はつらく、免疫反応による様々な合併症に苦しむ患者さんや、治療の甲斐なく亡くなられてしまう患者さんも多くいます。また予後の悪い多発性骨髄腫の生存率は5年以下(*私が実習した当時)と言われていて、骨髄腫による関節の痛みや、化学治療による副作用、そして予期しなかった診断・発病による精神的ショックなどで多発性骨髄腫の患者さんの多くは心身ともに苦しみます。


このように造血幹細胞移植科の患者さん達は過酷な治療を受けているので、様々なサポートを必要としています。財政面では失業保険や障害年金手当ての申請、社会面では地方から入院・通院の為の交通手配、治療期間中のホテルなどの滞在場所の確保(移植手術後は退院して一定期間通院しなければいけない)、精神面では、ストレスマネージメントなどの心理カウンセリングや家族カウンセリング、Canadian Cancer Agencyなどコミュニティー資源の紹介など、医療ソーシャルワーカーとして患者さんに出来ることは沢山ある病棟なのです。


そんな訳で、私も「なんだ、思ったよりも面白そうで遣り甲斐がありそうな病棟じゃん!」と期待に胸を膨らましたのです。でもそんな期待は初日の病棟チームミーティングであっさりと打ち砕かれてしまいました。


初日、私は担当教育係りである中堅ソーシャルワーカーのBさんと一緒にチームミーティングに参加したのですが、その毎朝のチームミーティングには血液専門医(Hematologist)、看護師長、薬剤師、栄養士、OT/PT、ソーシャルワーカー、スピリチュアルコーディネーター(宗教家)が参加するのが恒例となっています。しかしミーティングでは医者が看護師長と薬剤師に患者さんの病状・治療方針・予後を淡々と語るだけで、この三人だけがミーティングで会話を交わし、残りのメンバーはただ黙って聞くだけ。結果ソーシャルワーカー実習生にはただ退屈な時間でしかありません。私の印象では、どうやらV病院の造血幹細胞移植科は今流行りのInterdisciplinary Team Model (専門性を超えてチームメンバー全員が対等に意見を交し合う様式)ではなく、明らかにMedial Modelと呼ばれる旧式仕様、つまりドクター中心の封建的主義を採用しているようです。


初日からガッカリした私は、教育係りのソーシャルワーカーBさんに「ここの病棟では、ソーシャルワーカーはミーティングで意見交換しないんですか?」と聞いてみました。するとBさん「そうよ、だって変な事言ってドクター怒らせたら大変でしょ。専門医は忙しいんだから、彼ら・彼女らの時間を節約してあげるのもソーシャルワーカーの役目なのよ」と意味の分からない事を言います。そして「ここの科では、ソーシャルワーカーは目立たなくすることで、専門医を含めたみんなと上手くやっているのよ」と私に余計な事はするなよ!と念を押すBさんなのでした。


確かにBさんの後にくっ付いて彼女の仕事ぶりを観察すると、良く言えば控えめ、悪く言えば卑屈な感じで患者さんとも医師・看護師長とも仕事をしていて、私の事もあまりチームの人たちに紹介してくれません。その所為で、私もこのチームになかなか溶け込めず、「あなた誰?」と病棟内の職員に何度も聞かれて気まずい思いを何度もしました。なんか前回の実習先、高齢者精神科と違ってここは実習がしにくいな・・・と思わずにはいられません。そしてそれは造血幹細胞移植科のチームの雰囲気だけでなく、私の担当者Bさんもそう思わせる原因となっているのでした。


病棟内では控えめなBさんなのですが、私と二人の時は自分を大きく見せようと頑張ります。Bさんは私に「その辺のソーシャルワーカーと違って私は博士課程を途中までやってたのよ!」とか「ここの病院のソーシャルワーカーは使えない人が多いのよ!」とか「この患者さん用のパンフレット私が作ったのよ!良い出来だから、他のソーシャルワーカーが黙って持って行っちゃって困るのよ」とかネガティブな事を延々と私に話し、そして他者をこき下ろして自分の自慢話に繋げるところが私をうんざりさせるのでした。大体、修士課程の実習生に博士課程の方が偉いんだぞ!って自慢する神経が分からないし、同じ病院ではたらくソーシャルワーカーのGさん(私の元教育係)の方がBさんより100倍仕事できるし、出来の良いパンフレットだったら普通に同僚のソーシャルワーカーに配ればいいじゃん!って困ったと言いながら全然困った風も見せず嬉しそうに話すBさんを見て、私は(心の中で)毒づいたのでした。ハイ!私もBさんに負けず性格ひねくれてるんです(笑)。


こんな感じなので、「ちょっとこの人とは気が合わなそうだな~」と思ったのですが、ま~仕事させちゃんと教えてもらえれば文句はありません。性格の違いなんて普通にあるし、プロとしてそこは実習生でも割り切れます。でも私のBさんに対する信頼を失わせるのに十分な出来事がありました。


私が担当した患者さんNさんは多発性骨髄腫の診断を受けたばかりで、おまけに余命5年と医者には言われ、もの凄く落ち込んでいました。Nさんの夫も娘をNさんの精神状態を凄く心配しています。そんな中、Nさんが私に「もう死にたい」と漏らしたのです。私はBさんに相談し、精神科への受診を薦めた方が良いんじゃないかと話しました。Bさんも私の意見に同意し、Nさん担当の血液専門医に状況を説明し、精神科への紹介をお願いする旨をメールで遅れと私に指示しました。私はその指示通りにメールを血液専門医へと送ったのですが・・・翌朝、その血液専門医からパニック電話がありました。どうやらその血液専門医は普段見慣れない(?)患者さんの心の問題にどう対処していいか分からないみたいで、それでBさんにどうすればいいのか電話をしてきたのでした。そしてBさんはその血液専門医を落ち着かせるために「どうもすみません。うちの実習生が余計な事しちゃったみたいで。私がきちんと彼に説明して、メールなんて送らせないように言うべきでした。はい、大丈夫です、こちらで対処しますので」と言い放ったのです。


??????私の頭はハテナで一杯になった後・・・「ババァふざけんな~!!!」というBさんへの怒りで一杯になったのでした。だいたい私、Bさんの言う通りにNさんの件をドクターにお知らせしましたよね?っていうか、メールを送れってアドバイスしたのBさんですよね?それにNさんの精神状態無視ですか?大丈夫って、どうするんですか???と、ま~とにかく色んな疑問と感情が私の腹の中で渦巻いて、カッカして声を出す事も出来ません。そんな私に気づいたのか気づかないふりをしたのかは分かりませんが、Bさんは「そうね~、NさんにはNさんの家庭医に精神科への受診を薦めてもらいなさい」とさっきの電話の件は無かったことにして私にアドバイスをしたのです。その後、私はNさんに出来る限りのカウンセリングをして、どうにか彼女の気持ちを落ち着かせる事に成功したのですが、Bさんに対する私自身の怒りの気持ちは落ち着くどころか酷くなる一方でした。そして、さらに超ド級の非礼な仕打ちをこの後Bは私にするのでした・・・(あっ、呼び捨てしちゃった)。


3ヶ月の苦行の末、無事Bさんから合格を貰い、この退屈でつまらなかった実習も終わりました。せっかく培ったここでの経験を生かそうと、その後、私はがん病棟のソーシャルワーカーの求人募集に応募しました。面接もとんとん拍子に上手くいき、あとはReference(推薦者)を選んで簡単な確認をしたら採用ね!っと面接官にも言われたので気分も上々でした。通例、実習先の担当者を推薦者にするのが慣わしなので、私はBさんに私の推薦者になってくれるかどうか聞きました。するとBさん「もちろんよ!」と二つ返事。そうしてBさんを推薦者とし私は新しい仕事へと胸膨らましたのでした。しかし・・・いくら待てども採用通知が来ません。そのうちメールで「不採用」の連絡。え!?なぜ?あんなに面接上手くいったのに!?なんとなく嫌な予感がしました。そこで私は面接官に連絡を入れて、将来採用されるためには私のどこを向上させればいいのでしょうか?とアドバイスをお願いしました。すると面接官は「う~ん、あなたの面接は完璧だったんだけど・・・推薦者の人がシンペーのソーシャルワーカーとしての力量には疑問が残るって・・・だからもう少し経験を積んだらまた受けてね!」と言われてしまったのです。


うむむむ、おのれ~Bめ~!確かに力量が足りないのは認めます。だってペイペイの実習生だったんだし。でも普通、誰かに推薦者になって欲しいと頼まれて、でもその人のことを推薦できないと思う場合は、それを断るのがマナーです。だって推薦者なのに、推薦した人のこと悪く言ったらその人の就職のチャンスを奪ってしまうし、推薦者自身も嫌な人だと思われてしまいます。でもBはそれをやらかしたのです。推薦出来ないんだったら、最初から出来ないって言って欲しかったな・・・ホントまるで背中からナイフでブッ刺されたみたいな気持ちになりました。


ムカついたので半分嫌味でBに「この度は私の推薦者になって頂き、ありがとうございました。残念な事に面接は上手くいったのものの、今回は不採用となりましたことをお知らせ致します」とメールを送ったのです。するとBからは「残念だったわね。私も大学院卒業後の就職苦労したから、それで博士課程に行ったのよ。がんばってね」と返事が。

はぁぁぁぁぁ~意味わからねぇ~!?

最後の最後まで人の神経を逆なでするBなのでした。


この実習で私が学んだ事:

ドクター中心の封建的チームは避けるべし!

ソーシャルワーカーだからと言って、人が良いとは限らない!

残り物は選んではいけない!

絶対にBを超えるソーシャルワーカーになってやる!


の以上でした。ま~、これだけ学べただけでも、こんな実習でも意味があったのかもしれませんね・・・って思うしかないのよね(涙)

カナダでソーシャルワーカー Social Work in Canada

カナダでソーシャルワークをしてみませんか?

0コメント

  • 1000 / 1000