私がソーシャルワーカーになったわけ


4月は新たな門出の月。四季に疎い(?)カナダでは別段特別な月ではないけれど、日本人の私にとっては4月は自然とワクワクした気持ちになります。それは入学式や入社式など新たな世界に飛び込む時期なのだ!という過去の体験が強く私の頭の中にインプットされているからなのでしょう。そんな4月、バンクーバーでもようやく満開になった桜を見ていると、ついつい学生だった遠い昔を思い出してしまいます。そもそも思い返してみれば、私がソーシャルワークの学部に入ったのは2002年の秋でした(春じゃないのかよ!?笑)。そして今が2018年・・・つまり私がソーシャルワークの世界に入ってもう早16年も経った事になります。



こんなに時が流れてしまうと、自分がソーシャルワーカーを志した理由を忘れてしまうどころか、「そもそも僕はどうしてソーシャルワーカーなんかになろうと思ったんだぁ~?」ってギスギスした仕事の毎日を送る中で自虐的に自問することが増えてしまうのが悲しい現実です。しか~し、だからこそ本来の動機「なぜソーシャルワーカーになろうと思ったのか?」を思い出す事は、自分のモチベーションの維持と、そして「こうありたい将来の自分」を描く上でとっても大切になると思うので、私はこの機会に「私がソーシャルワーカーになったわけ」を思い出してみようと思います。



ソーシャルワーカーやソーシャルワーカーを志している人は皆「人の役に立ちたい」「人の手助けをしたい」という思いを持っているはずです。もちろん私も↑の気持ちを持っているのですが、でも、よくよく考えてみると一体いつから私は「人の役に立ちたい」なんて思いを持つようになったのか不思議になります。それは私の成育歴(?)を省みれば私がこの疑問を持つ理由も分かっていただけると思います(笑)。



私は一人っ子(おまけに母方では一人孫)として育ちました。一人っ子のよくある特性として、大人の中で育つので「大人の顔色を見るのが得意!」というのがあるのですが、私も例に洩れず顔色を見るのと嘘が得意だったので(・・・と、とりあえず過去形にしてみた)、子供の時は自分が欲しいものは大抵手に入れてきました。私の両親は否定するでしょうが、ハッキリ言って甘やかされて育てられました。もちろん当時は自分なりに不平不満もあったはずですが、今から思えば恥ずかしいくらい何不自由なくやりたい放題に育てられたと言えます。子供の頃から外面だけは良かったので、いつも大人からは「しんぺーは優しくて気が付く子だ」と言われていましたが、実際は思いっきり自己中だった事しか記憶にありません。とてもじゃないけど「人の役に立ちたい」という素直な思いが育つ素地は子供時分の私には見当たりません。



さて、こんな風に甘やかせて子供を育ててしまった私の親なのですが、2人は世間では「全共闘世代」と呼ばれる全共闘運動、安保闘争、ベトナム戦争の時期に大学生活を送った人達なので、強い社会思想と理想主義を持っています。おまけに母親は元精神保健ソーシャルワーカーときているので、2人で時事問題を語ったり、友達を呼んでは「熱く」政治・社会討論をする、なんてことが日常茶飯事でした。こんな環境下で育っていたので、子供ながらに私の耳はダンボになって(耳年増とも言う)、知らず知らずのうちに彼らの政治・社会思想が私の頭を洗脳していったのです(笑)。もちろん子供には社会思想なんて理解できませんが、でも熱く語る2人+友人達が楽しそうに、そして活き活きして見えたのは私の脳裏に焼きついたのです。



そんな私も高校生になり将来を考える時期になりました。熱く政治・社会を語る親元で育った私には、高校・大学生にでもなったらそんな風に友人たちと社会問題を語るもんだと思っていたのですが、私の世代はいわゆる「シラケ世代」。そんなのどうだっていいじゃ~んって感じで斜に構え、何事も深刻に考えず今を楽しむ姿がイケテルとされた時代に、政治や社会をアツく語ったりしたら「ダサい」人になってしまいます。そのため私も「社会問題?べつに興味ないしどうだっていいんじゃない?」ってフリはしたものの、なんだか心に冷たい風が吹いて「生きている!」っていう充実感が沸かないのです。そんな中テレビのニュースで火炎瓶を投げつけている韓国や中国の民主主義運動に参加している若者達を見て「これだ!」って私は思いました。この熱い感じが私の求めているものなんだ!(火炎瓶の事ではない)と気が付いたのです。いや、もっと掘り下げれば、熱い思いを皆で共有し一緒に目標を成し遂げようとする姿に感動したのです。



これをきっかけに私は国際協力の仕事がしたいと思うようになりました。日本みたいにシラケてない発展途上国で、将来の夢と希望に燃える熱い人たちと一緒に働きたい!と思ったからです。そしてそれを考える上で、ソーシャルワークという選択肢が出てきたのです。それはもちろん母親がソーシャルワーカーであった事も大きな要因です。そうでもなければソーシャルワークなんて言葉自体浮かぶ事もなかったはずですから(ソーシャルワーカーの世間での認知度もまだまだだし・・・)。こうして私は日本では叶えられない「皆で熱く一致団結して目標に取り組む」夢を、ソーシャルワーカーになって国際協力をするという形で実現しようとしたのでした。



あれ?でも改めて考えてみると、私のソーシャルワーカーになろうと思った動機は、「人の役に立ちたい」って言う思いよりも、自分自身のニーズ、すなわち目標を共有できる仲間たちと一緒に活動したいという「人との繋がり」を求めるニーズを満たすことが主な理由だったことが分かります、っていうか今気が付きました(笑)。そしてこの私の「熱くなりたい」「一致団結したい」「人と深く繋がりたい」という欲求・夢は、ソーシャルワーク学部に入った瞬間ものの見事に叶ってしまうのでした。講義で日々社会問題について学び、クラスメートとのディスカッションに明け暮れ、同じ社会思想をもった仲間と過ごす学生時代は私にとって夢のような時間でした(・・・なんてテストや課題に追い回されていた当時は思う余地もなかったが)。挙句の果てには「もう社会問題なんて聞きたくないよ~」って叫んでしまうくらいお腹一杯な学生時代でした。そう、まるで大好物ばかりある食べ放題に行った後のように・・・



そしてもう一つ、学生時代に新たに芽生えたソーシャルワーカーになりたいと思った理由。それは自分の無知を正したいという気持ち。様々な背景をもつソーシャルワーク学部の学生たちと知り合う中で、いかに自分が今まで世間や他者に対して無知・無関心であったかが身に染みたからです。貧しい先住民族出身の学生、虐待を受けて育った学生、多くの障害をもつ学生、闘病しながら勉強する学生など、私が今まで出合った事もないクラスメートたちと一緒に学んでいく中で、自分自身が恵まれていたということさえ気が付かなかった私の愚かさと無知に我ながらショックを受けたのでした。それと同時に、困難を抱えたクラスメートたちが問題意識を持ち、それを乗り越え、逞しく生きていこうとする姿勢、勇気、技、なんかを見聞きすることがとっても新鮮で、またそれが自分自身がこれから強く生きていくうえでの大きな知恵になりそうな感じがしたのです。ソーシャルワーカーとして困った人の手助けをする事は、将来自分が困難に陥った時の知恵・道しるべになるんだ!ってことを学生時代に知り、それが私がソーシャルワーカーとしてもっともっと自分とは違う環境にいる人たちの事を知りたいという気持ちにさせてくれたのでした。



なるほどね~、そうだったんだ!と今ここに書きながら、私、目からウロコです。もしかしたら当時の私は単純に「ソーシャルワーカーになって世界の困っている人たちを救うんだ~!」なんて思ってたのかもしれませんが、今の私から考察すれば、私がソーシャルワーカーになった・なりたいと思った理由は明らかに利己的です。これはやはり私の自己中だった子供時代から変わっていません(三つ子の魂百までと言うし)。でも私は、こんな自分のニーズに基づいた動機でも充分良いのではないかと思うのです。もし純粋に私のソーシャルワーカーになりたいという理由が他者のためならば、きっと私はすぐに燃え尽き、この仕事を続けることは出来なかったと思うのです(だって私はそもそも自己中ですしね 笑)。でも自分の「人と繋がりたい」「皆と一致団結したい」「無知を正したい」というニーズを満たすためのソーシャルワークならば、患者さんにも迷惑をかけずに、でも自分自身のために働く事が出来ると思うのです。そして今の職場はまさに自分のニーズを満たす理想の職場だと言えるのではないかと思うのです。



あらら!今回は凄いですね。時差ボケ直後で「あ~もうこんな仕事したくね~」って思っていたのに、どうしてソーシャルワーカーになったのか?を考えたら、「ここの職場最高~!」って認知の大転換(笑)。でもだからこそ、どうしてソーシャルワーカーになったのか?を定期的に思い出すことは大切なんだと思います。ただしソーシャルワーカーになって「熱くなりたい」という夢は、この常にエアコンが効いている肌寒い事務室では叶いそうになりません・・・(「ついに争い勃発!?温度調節の難しさ」参照)。でも頑張って同僚達と患者さん達が直面している社会問題について語ることで、失いつつあるアツい気持ちを取り戻していきたいと思います!なんて、とりあえず言ってみました。でもこの「なんでソーシャルワーカーになったの?」技、結構やる気復活には効くんじゃないかって思うので、私これから職場の同僚達に聞いてみようと思います。そもそも皆、どうしてソーシャルワーカーになろうと思ったのか興味あるし。


皆さんがソーシャルワーカーになった・なろうと思った・興味を持った動機はなんですか?


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