ソーシャルワーカーの採用面接 必勝法!? 前半戦


前回「ソーシャルワーカーの職探し」について書いたので、今回は採用面接について書きたいと思います。


前回の記事で私は、ソーシャルワーカーの職探しには「コネ」が大切だ!とお話をしたのですが、それは採用面接に呼ばれるまでの話。採用面接では「コネ」は通用しません。つまり、カナダにおける「コネ」とは採用面接に呼んでもらうためだけのものなのです。そこから先は実力の世界、いかに口八丁・口達者で面接を乗り切れるかにかかっているのです。



さて医療ソーシャルワーカーの採用に関しては、それぞれの病院のソーシャルワーカー部長(Practice Leader)が、採用先の医療科のマネージャーと共に採用面接を担当するのが通例です。つまり2人の面接官が志願者に質問をするという形になります。このドキドキの面接試験なんですが、医療ソーシャルワーカー採用面接における質問事項というのは実はどこでも似たり寄ったりなんです。なので、何回か採用面接の経験をすれば、おのずとどんな質問を聞かれるのか分かるようになり、準備をするのも簡単になっていくのです。そこで、私の粋なお計らいによって(笑)、今回は特別に採用面接で必ず聞かれる質問事項を大公開したいと思います。(将来、カナダで働くあなたのために!!!ぜひカナダに来てください)



それでは「カナダ医療ソーシャルワーカー採用面接必勝法!」と題して採用面接の質問事項と解答を書いていきたいのですが、答えはあくまでも私が正しいと思った答えであり、正解とは限りませんのであしからず。でも現にこうして私は医療ソーシャルワーカーとして採用されているんだから、私の模範解答、間違っているはずはないと思うんだけどな~・・・


では始めましょう。採用面接必勝法~!



第一問:

あなたの経歴と、あなたがソーシャルワークで実践している理論について教えてください。



(回答例):私はNPOでエイズ予防関連の仕事をしてきました。そこでは病院のクリニックと連携して、新規のHIV患者さんのカウンセリング、サポートグループ、コミュニティ資源の紹介などの仕事をしました。またHIV患者さんへの偏見撲滅のため、様々なコミュニティで啓蒙活動もやってきました。やはり社会的偏見がHIV患者さんには大きな精神的負担になっていると感じましたので、この仕事では、私は主にシステム理論をつかってHIV・エイズが患者さん個人に与える社会的・文化的影響力を分析し、それを元に啓蒙活動やサポート活動に役立ててました。またカウンセリングではPsychodynamic Theory(精神力動論)を使って患者さんの病気による心理的負担の軽減に努めました。



(解説)

最初の質問は必ずソーシャルワーク理論からって決まってるんですよ!今まで何度と医療ソーシャルワーカー採用面接受けてきましたが、これを聞かれなかったことはありません。また、病院によっては「うちの病院のMission Statement(社訓?)知ってる?それ、どうあなたの理論と実践できるの?」なんて言う難解な質問を受けた事もあります。私は当然その病院の社訓なんか調べてこなかったので、この面接は第一問目で大失敗に終わった事は言うまでもありません。さてこの理論の質問では、自分が過去の仕事でどのように理論を実践したのかを、最低でも二つ以上の理論と実践例で説明できる事が満点を取るには望ましいです。でも面接官だってそれほど理論に詳しくなんてないので、適当に知ったかぶりで理論と実践例が話せればオッケーなのです!



第二問:

BC州の法律で、医療ソーシャルワーカーが知っておくべき法律を二つ挙げて、その実用方法を説明せよ。



(回答例)

私はかつて精神科病棟で働いていた事があるので、Mental Health Act (精神保健法)を熟知する必要がありました。特にSection 28(28条)は、措置入院の際に適応されるので特に重要視していました。また精神科に入院される高齢者の中には、退院後もネグレクトや虐待を受ける可能性の高い患者さんもいらっしゃるので、Adult Guardianship Act (成年後見法)の観点から地域の保健所のケースマージャさん達とも緊密に連携するよう心がけました。



(解説)

私この法律に関する質問、大の苦手なんですが、ありがたい事に「BC州使える法律一覧集」なる物が巷ではソーシャルワーカー用に出回っているのです。目ざとい私は、早速それを入手して、面接で使えそうな法律を4つくらい暗記しています。この法律に関する質問も、必ずと言っていいほど聞かれますので、少なくとも4~5つは暗記して、簡単でいいので、どう仕事で法律を使っているのか・意識しているのかを答えられるようにしましょう。ちなみに私がよく面接で使う法律は:


• Adult Guardianship Act (成人後見)

• Mental Health Act(精神保健・措置入院)

• Child, Family, Community Service Act(児童保護)

• Freedom of Information and Protection of Privacy Act(情報・カルテ記載)

• Health Care Consent and Care Facility Admission Act(入院・入居に関する権利)

• Representation Agreement Act(アドバンスケアプラニング)



自分が受ける病院の科によって、一番ウケそうな法律とそれを適応したケース例を挙げるようにしています。面接官もそんなに法律に詳しい人なんて多くはないので、この質問事項も基本的に「法律も一応知っているますよ~」程度で大丈夫な感じです。



第三問:

以下の状況の中から、あなたが大切だと思う仕事に優先順位を付けなさい。そしてなぜその優先順位なのかを述べなさい。



状況:午後2時を過ぎてもお昼ご飯を食べる時間がなかったあなたは、今まさにお昼ご飯を食べようとしています。そしたら突然患者さんから電話がきて「病気のせいで仕事も家族も失ってもう死んでしまいたい」と訴えます。そんな電話のさなか、今度はドクターがやって来て「患者さんの緩和ケアについてのミーティングを開くから今すぐ病棟に来て!」と言われました。さらに事務員も来て、患者さんの家族が迎えに来なくてもう2時間も泣きながら病棟で待っているから、今すぐ家族を呼んで欲しいと頼みに来ました。さあ、あなたはどの業務から手をつけますか?



(回答例)

1. 死にたいと言う患者さんの話を聞く(理由:自殺予防は義務だから)

2. 緩和ケアミーティングへ参加(理由:末期治療への患者さん・家族サポート)

3. 泣いて待っている患者さんの世話(理由:事務員に家族に連絡してもらう)

4. 一番最後にランチを食べる(理由:自己犠牲の精神!?)



(解説)

はっきり言って、優先順位第一位はランチを食べる事でしょ!?だって「腹が減っては戦は出来ぬ」だし、もし空腹でソーシャルワーカーが倒れでもしたら上記すべての仕事が出来なくなってしまいます。ですので、私の実務経験から言わせてもらえば「絶対ランチが最初!!!」なんです・・・が、よっぽど口が立つ人で、議論には絶対の自信がある人以外は、無難に最優先事項は「自殺予防」、そして一番最後はランチにしておきましょうね。ちなみにこの「優先事項はどれ?」クイズも必ず出題されます。とくに病棟のソーシャルワーカーは常に激務ですので、この質問の答えが後々あなたに対する評価にも大きな影響を及ぼします。最優先事項は必ず「自己もしくは他者に危害が及ぶ」可能性があるものを選びましょう。残りの優先順位はそれほど重要ではなく、どちらかと言えば、なぜその順位にしたのかがキチンと言えれば合格点は間違いなくもらえます。



あらら、前半3問だけでも解説がもうこんなに長くなってしまいました。でもこの3問は必ず出題され、おまけに準備もしやすく、点数も甘めにつけてもらえるので、ここで点数をガッチリと稼いでおきましょう。普段は笑顔が多いソーシャルワーカーも、採用面接官になると真顔・ポーカーフェイスになる人が多いので結構緊張します。それでもやはりソーシャルワーカーは人情には弱いので、いかに私の仕事が、困難に苦しんでいた患者さんの悩み・辛さを和らげてあげられたかと言う点と、それでも私にはもっと色々できたことがあったんじゃないか・・・と思う!って点を上手く混ぜて表現すると、面接官の心象を良くすることが出来ます。だって自慢しつつ謙遜する人って(逆はダメ?)、なんだかとっても良い人のように見えるじゃないですか~、だからこの技を私は毎回使っています(って私は正真正銘いい人ですけどね 笑)。



さて次回は採用面接の後半戦について書きたいと思うのですが、後半戦はすべてケース事例、奇問難問が続出します。この答え方が行く通りもあるケース事例問題を、頭を真っ白にさせず、落ち着いて説く事が出来るかどうかが採用面接における運命の分かれ道なのです!!!



・・・という訳で、次回は「ソーシャルワーカー採用試験にでるケース事例の答え方」にみっちり焦点をあてて解説していきたいと思います!


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