ソーシャルワーカーの採用面接 必勝法!? 後半戦


さてさて前回からの続きで、カナダにおける「ソーシャルワーカーの採用試験必勝法!」と題し、ソーシャルワーカー採用面接試験をのりきるコツをお伝えしています。今回の後半戦は、「ソーシャルワーカー採用試験で出されるケース事例の答え方」に焦点を当てて解説したいと思います。



ソーシャルワーカーと言えばケース事例~!と言うように、採用試験でもケース事例に基づいた質問がいくつも出されます。中には引っ掛け問題みたいのもあるので要注意です。それでは実際の出題例を使って、回答例と解説を見ていきましょう。ただし前回と同様、答えはあくまでも私が正しいと思った答えであり、正解とは限りませんのであしからず。これを参考に面接受けたらボロボロだった・・・なんて場合も自己責任です。でも何度も言うように、私は現に医療ソーシャルワーカーとして採用された訳なので、たぶん大丈夫なはず・・・(笑)



それでは後半戦、ケース事例問題、始めましょう~!!!



第四問:

以下のケースで、あなたはどのように患者さんを援助するのかを答えなさい


Aさんは80歳女性。自宅で転んで病院に入院しました。退院も間近な中、Aさんの友達Bさんがソーシャルワーカーであるあなたに、Aさんが財政的に家族から虐待を受けているようだから助けてあげてくれと頼まれました。



(回答例)

このケースではAdult Guardianship Act(成人後見法)を参考にして患者さんの援助をしたいと思います。まずAさんに「助けを求む能力があるか」を確認するために、Aさんの認知に問題が無いか調べます。カルテの情報や、医療チームからの情報で、認知能力に疑いがある場合は、精神科医を呼んで詳しく調べてもらいます。もしAさんの認知機能が正常、問題なし、の場合は、成人後見法の適用は出来ないので、Aさんの財政的虐待に対して直接できることは無いですが、それとなくAさんとの会話から状況を調べ、Aさんから要請があれば公的管財人の紹介や高齢者向けの財政サービスなどの社会資源を提供します。もしAさんに認知症があり「助けを求める能力・財政を管理する能力」が無いと診断された場合は、成人後見法を適用して、Aさんから出来る限りの財政状況・家族関係を調べ、必要とあれば公的管財人にAさんの財政管理をしてもらいます。また地域の保健所とも連携し、退院後も対応できる体制を作ります。



(解釈)

最近、通称AGLと呼ばれる成人後見関連の質問が頻繁に出されるようになってきました。というのも、高齢者へのネグレクト・虐待は近年増加の一途だからです。この問題でも分かるように、ケース事例から得られる情報は限られているので、ケース事例の質問に上手く答えるためには様々な状況を想定し、それぞれの状況に合った答えを言わないといけません。↑のAさんのケースだって、Aさんに認知症があるかないかで、全然違う答えになってしまいますからね。



第五問:

以下のケースでは、あなたはどのように倫理ジレンマに対応しますか?


Bさんは40歳男性。腎臓透析を過去2年間受けています。Bさんは発達障害のためIQが低くグループホームで生活しています。このBさん最近透析治療を嫌がるようになり、透析を止めたいと言いました。透析チームはBさんの意志を尊重して治療を止めさせるべきだ、という意見と、Bさんは透析を止めたら死んでしまうということを理解していないから、治療は止めるべきではないという意見で割れています。透析チームはソーシャルワーカーにどうすべきかアドバイスを求めました。



(回答例)

私はまずBさんとお話しをして、Bさんが透析を止めたら死んでしまうことを理解しているかどうか確認します。そしてBさんが透析を止めたい理由を探り、治療を止める以外に出来る事がないか考えます。もしBさんが透析を止めたら死んでしまうことを理解し、それでも止めたいというのなら、Bさんの意志を尊重する形で家族カンファランスを開いて、ご家族・チームと緩和ケアの準備をします。もしBさんが透析を止めたら死んでしまうことが理解できない場合は、Bさんのご家族とカンファランスを開いて今後の治療方針について話し合います。カンファランスでは、ご家族の誰がBさんの医療治療決定権を持っているのかを明確にし、必要とあれば法的手続きのお手伝いをします。またBさんのご家族と、どういう状況になったらBさんの透析治療を止めるか?というお話をご家族とし、Bさんの生活の質を考える上でベストな決断が出来るようにサポートします。



(解説)

なんだか、質問に答えてるような答えてないような回答ですが、面接官が「うん、うん、良く分かってそうだ」と思わせるように答えられればいいんです。でもこの倫理ジレンマに関係するケース事例も必ず出題されます。このケースではBさんの判断能力が倫理ジレンマの対象です。発達障害のあるBさんの意志を尊重すべきか否か?でも、これも先ほどのケース事例と同じく情報が乏しいので、Bさんの発達障害がどの程度のものか全く分かりません。ですので、ここでもあり得そうな状況・想定とそれにあった回答をすべて答える必要があります。ここで大事なのは:1)倫理ジレンマを理解している、2)どちらの立場も理解している、3)でも、どうすればいいか理論的に答えが言える、ことが倫理ジレンマ問題で合格点がもらえる秘訣です(分かりにくいかな・・・?)。



第六問:

以下のケースでは、病棟ソーシャルワーカーとしてあなたは何をしますか?


肝臓の治療のため入院したCさんは今朝自宅へと退院されました。しばらくするとCさんの娘さんからソーシャルワーカーのあなたに電話があり、Cさんは退院してすぐお酒を飲み始めたとの事。娘さんはCさんがアル中なんじゃないかと心配しています。このままでは、またCさんの肝臓が悪くなって入院する羽目になってしまうから、なんとか助けて欲しいとCさんの娘さんはあなたに助けを求めます。



(回答)

Cさんは病棟から退院されたので、何もすることは出来ない。以上。



(解説)

うそ!?本当にそれでいいの???と思ったあなた!私の気持ちが分かって貰えます。私もそんなはずはない!と思って、「えっと、地域の保健所と連携してCさんの様子を見に行ってもらい、あとアルコール依存関係の社会資源やカウンセラーの紹介なんかをCさんにします!」って答えたら、面接官に「それは間違いです。病棟ソーシャルワーカーは患者さんが退院するまでが仕事です。それに退院後の患者さんの相談を受ける時間も余裕も病棟ソーシャルワーカーは忙しいからないんですよ!分かってますか?」って逆に怒られてしまったのです(涙)。だから私、このケース事例が引っ掛け問題だって知っているんです。でもちょっといやらしいですよね。だってソーシャルワーカーだったら普通、患者さんのために出来そうなこと考えるじゃないですか?おまけに、それが採用試験のケース事例だったらなおさらです。「え?わたし何もしませんよ。だって患者さん退院したんだし・・・」なんて答え、とてもやる気マンマンなソーシャルワーカーの答えじゃないし。でも、これが正解なんです。納得いかねぇ~。でもこんな問題もケース事例では出されることもあるので、要要要注意です!!!!!



さて3つのケース事例問題を見ていきましたが、いかがだったでしょうか?簡単だった?難しかった?意味が分からなかった???色々と意見はあると思いますが、私から秘訣を言わせて貰えば、ケース事例の質問においては、考えられる限りの状況と答えを全部言い切ってしまいましょう。どんなに答えが長くなってしまったっていいのです。ソーシャルワーカー面接では長く喋った方が有利に働きます。なぜなら、延々と話しているうちに面接官が聞きたいと思っているキーワードに当たる確立が上がるからです!



医療ソーシャルワーカーの面接試験は、組合での規則で答えが全てあらかじめ決められ得点化されています。ですから面接官のさじ加減で合否が決められないように出来ているのです。つまり、答えに含まれているキーワードにヒットすればするほど点数も伸びていくのです。逆に言えば、どんなに素晴らしい回答をしてもキーワードがその中に含まれていなければ得点が貰えないという事なのです。なんでそんなこと知ってるかって?それは私、かつて面接官に「う~ん、シンペーさんこの問題にちゃんと答えてるんだけど、あるキーワードを言って貰わないと点数上げられないんだよね。どう、わかるキーワード?」って言われたからです。その後は延々と「連想クイズ」が続けられ、それでも一向に私がキーワードを当てられないのに郷を煮やした面接官が「あなたの言いたい事で○○だよね?」って救い舟を出してくれ、私もそれでようやく「はい、もちろん○○です!」と言えて合格点を貰えたのです。これ多分違反行為ですけどね・・・笑。



そんな訳で皆さん、カナダで採用面接に呼ばれた際は、「短く簡潔に!」ではなく、「ダラダラと長~く」回答して面接官から「もう分かったから」と言われるまで話しましょう。一番最近受けた採用面接では、私、面接中三度も「はい、もういいです!この問題はもう充分ですから、次の問題に行きましょう」と言わせるほど、私の話術(?)も上達した今日この頃。ぜひ皆さんも怖がらず採用面接に挑戦してみてください!おまちしております(笑)。


カナダでソーシャルワーカー Social Work in Canada

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