患者さんから聞く不思議な話


日本ではちょうどお盆休みが終わった頃でしょうか?カナダではもちろんお盆休みなんて気が利いたお休みはございません。だって北米でお盆と言えば、それはハロウィンのことですからね~(笑)。さて私が子供の頃は、お盆の時期の楽しみと言えば、花火、スイカ、そして心霊番組と相場が決まってました。怖い怖いと思っても、ついつい見聞きせずにはいられない不思議な魔力をもつ心霊番組。お化け話には欠かせない病院という好立地(?)な場所でソーシャルワーカーとして働く私なのですが、残念ながら今までお化けを見たことはありません・・・外には決して口外されない医療ミスなんていう話はチラホラ見聞きするんですけどね(ってこっちの方がよっぽど怖いけど)。それでも私も患者さんからは結構「不思議な話」を聞くんですよ・・・という訳で、せっかくの夏休み(じゃないけど)、私も患者さんから聞いた不思議なお話を今日はこちらでお披露目しようと思います。ヒヒヒ~



まずはお化け屋敷の話。私が数年前に担当した患者さんAさんのお話です。私がいつものようにAさんに「おはようございます。今日の体調はいかがですか?」と聞くと、「いや~今日はちょっと寝不足なんだよ、夜中に幽霊が出ちゃってさ」と明るく答えるのです。・・・ん?いま幽霊?ゴーストって言った?あまりにもサラリと言われたので、なんと返事していいのか分からなくて、「あらら、それは大変でしたね~」って適当に答えたら、Aさんもちょっと気が楽になったのか「あまり信じてもらえないんだけど、うちにずっと幽霊が住み着いているんだよ~」と仰るのです。思いっきり文系のソーシャルワーカーでも一応科学的な医療現場で働いているので、「これってあなたの知らない世界じゃね?怖ぇ~!」なんて喜んでいる場合ではありません。「あら?もしかしてこの患者さん幻覚症状があるのかな?」と医学的に疑ってみるのが正統派医療ソーシャルワーカーがする仕事。もっと患者さんの精神状況を分析してみないと!とデキル医療ソーシャルワーカーとしての使命に燃えた私が次にした質問は「どんなお化けが出るんですか?」。そうです!患者さんがどんな風に自宅で出現するという幽霊を説明するかによって、患者さんの思考形態・認知能力を測ろうと思ったのです。いいえ!間違っても私の好奇心から聞いたんじゃありませんよ。



すると人の良いAさんは「もう30年くらい前からずっと住み着いていて、男と女と子供の三体の霊が出るんだよ。私の家族もみんな霊を見ていて、どうやらこの家を買う以前から住み着いているらしいんだ」と言いました。お化けが出るのも怖い話だけど、そんな家に30年も住んでいるAさん一家にも驚きです。「30年も住んでいて怖くないんですか?」と思わず聞いた私に「うん、最初のうちは怖かったから牧師さんや霊媒師に徐霊を頼んだんだけど、みんな口々にこの霊たちは払えません!って言うから諦めて一緒に住むことにしたのさ。あははは」と笑って答えるのです。笑えねぇ~・・・なんだか逆にゾッとしました。ま~でもAさん家族と幽霊のご家族、みんながお互い納得して同居しているのなら別になんの問題もないよね・・・それにAさん別に困っているわけでもないし(今日は寝不足だけど・・・)。そんな訳で、「じゃ~これからも頑張ってください。でも何かあったら相談してくださいね」と別に霊媒師でもイタコでもない私に出来る事などないのですが、とりあえずソーシャルワーカーとして相談にはのりますよ、と言ってAさんの元を去ったのでした。そしてその後すぐにAさんの住所を確認して、将来この家が売りに出されても絶対買わない事を誓った私なのでした。



次にご紹介するのは臨死体験。これは1年前に担当したBさんのお話。その当時Bさんは病院から退院したばかりでした。私がBさんに「退院後の生活はどうですか?なにか不自由していませんか?」と聞くとBさんは「ぜんぜん元気よ。入院前よりもむしろ元気になったんじゃないかと思うくらい!」とはしゃいだ感じで話すのです。「でも突然の心筋梗塞で大変だったんじゃありませんか?」とBさんに聞くと、Bさん「実はあの時ね、すごく不思議な体験をしたのよ・・・」と言って遠慮気味に口をつぐみます。どんな体験か聞かないほうがいいのかな?と思ったのですが、でもなんとなくBさんは話をしたそうにも見えます。思い切って「どんな体験をしたんですか?」と聞いてみると、Bさん「信じてもらえないかもしれないけど・・・私、心臓が一度止まって死んじゃったの。それも救急車の中で。なんでそれを知っているかというとね・・・私、救急車を上から見ていたのよ。ちょうど橋を渡っている時だったわ。私自身、救急車で横たわってるのも見えたわ。なんかあの時すごく気持ちがいい感じだったのよ」と答えるのです。「あらま!それは凄いですね・・・」としか私は驚いて言えませんでした。たしかに臨死体験の本を読んだり、番組をみたりして、そういう体験をした人がいるのは知っていましたが、そんな話を直接聞くとやっぱり驚き、そして不思議な気持ちになります。そしてさらにBさん「あの体験をしてから、死ぬのが怖くなくなって凄く気分が落ち着くようになったのよ」と言いました。「いや~それは良い経験をしましたね。羨ましいです!」とそんな不思議な経験をして元気になったBさんが本当うらやましかったです。



私のお気に入りの患者さんの一人Cさんも臨死体験の持ち主です。彼の場合は、ある夜寝てたら突然身体から魂が抜けて、どんどん上に昇っていって、最後には眩しいくらいの場所に着いて、そこで親戚のおばさんや縁戚、そして光り輝く神様にもお会いしたそうです。でも神様から「まだここには来るでない!」と一喝され、気が付いたらパニクッている家族が見守るベットの中で目を覚ましたそうです。どうやら彼も心筋梗塞を起こしていたそうです。「いや~俺ぜったいあの時死んでたんだと思うわ。でもこんな経験をすると、死ぬのもぜんぜん怖くなくなるよ」と、うっとりした感じで語るCさん。あ~いいな~、こんな体験できたら、人生ももっと豊かに生きられそうだよね~とまたまた私は羨ましく思うのでした。でもそんなCさん、実は結構の霊感の持ち主らしく、昔住んでた家で(死んだ?)少年の顔と手が突然壁からニュ~と出てきた経験をしたり、つい最近までの一年間、Cさんの透析中にはいつも黒い影がベット脇に立っていたり、と怖い体験もしてるのです。っていうか、じゃ~いつも私がCさんとお話してたときもその黒い影が立っていたってこと!?ゾゾゾ・・・その話はもっと早くにして欲しかったな・・・と急に怖くなった私はちょっとムッとしてしまいました(笑)。Cさん曰く「多分あの黒い影は、去年亡くなられたあの患者さんじゃないかな・・・」とこれまたかつて私の担当だった患者さんの名前が出て、ドキッとしたのでした。



さてこんな感じで、結構不思議なお話を聞くこともある医療ソーシャルワーカーの仕事なのですが、これをどういう風に受け取るかは、それぞれのソーシャルワーカー次第です。まー当然と言えば当然ですよね。神様を信じている人もいれば、信じてない人もいる。お化けを信じている人もいれば、信じていない人もいる。さらに、医学的には幻聴や幻覚という可能性もある。特に医療現場では、超常現象や宗教の話は基本的に忌避されているので、患者さん自身もなかなか本人が体験したことが言いにくい土壌があると思います。それでも私が思うのは、ソーシャルワーカーの基本姿勢はまず患者さんの話を聞いて、患者さんの思いを理解する事。なので、どんな不思議な話も、私は基本的には否定しません。でも必ずしも肯定するわけでもありません。だって肯定するにしても、否定するにしても、そこには私個人の価値観が入ってしまうからです。だからとりあえずは、患者さんの話を聞いて「へ~そんなこともあるんだな」というスタンスを取るようにしています。患者さんが体験したことが本当に起きたことがどうかは誰にも分からないんだし、実際患者さんはそれが本当に起きたこととして認識しているわけだから、それを否定する権利も必要も私はないと思うのです。またそんな患者さんの話を聞く中で、その患者さんの持つ価値観や、生死観なんかが垣間見れて、それがゆくゆく医療判断の役に立つなんてこともよくあります。ですので私はこういう不思議な話を患者さんから聞くのが大好きなのです。それに加えて、超常現象好きな私の好奇心も満たしてくれますしね(笑)。



私個人としては、あまり宗教的ではないと思うのですが、それでも神がかった力というものはわりと信じています。というのも、私が生きてきた中で、またソーシャルワーカーとして働いてきた中で、偶然と言うには出来すぎのような出来事の数々を目にしてきたからです。それに人間の力を超えたスーパーパワーの存在があったらいいな~っていうロマンのようなものもあります。だって↑の患者さん達が経験したような臨死体験で、患者さん達の死への恐怖がなくなって毎日を豊かに過ごせるようになったなんて素晴らしいではないですか!まぁ、だからと言って積極的に臨死体験がしたいわけではありませんが(汗)。



という訳で、今回は患者さんから聞いたちょっと不思議な話をいくつか紹介してみました。みなさんの中で、こんな怖い話を聞いた!なんて人がいたらぜひ私にも教えてください。8月中は怖い話聞きたい欲求がピークに高まるので、ただ今怪談話絶賛受付中です!笑


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