「医療ソーシャルワーカー」シンペー、COVIDワクチンを打つ!(訂正:打たれた!)
カナダでは昨年12月から医療従事者および介護施設入居者を対象にコロナワクチンの接種が始まりました。下記のようにフェーズ1から4に分けてワクチンが提供される予定になっています。
フェーズ1(2月まで)ハイリスクグループ対象
フェーズ2(2月〜3月)高齢者、65歳以上の先住民、医療従事者対象
フェーズ3(4月〜6月)79歳から60歳までの人、深刻な病気を抱える人対象
フェーズ4(6月〜9月)59歳から18歳までの人
ちなみにフェーズ1のハイリスクグループには誰が入るのか?それは・・・
・介護施設入居者と職員
・コロナ感染患者と接する医療従事者(例:ICU、ER、外科、コロナ病棟など)
・僻地に居住する先住民族の人々
という感じにグループ分けされています。
ちなみに皆様の中には、なぜ先住民族の方々が最優先グループに入っているのか?と疑問に持たれた方もいると思いますが、それはとても良い疑問です。なぜならそこにはカナダという国の成り立ちが深く関わっているからです。俗に言う「カナダ」の歴史は、16世紀にヨーロッパからの入植者が北米大陸にやって来た時から始まるのですが、いやいや、しかし、それ以前から何万年にわたり北米大陸にはFirst Nations, Indigenous People, Native Indiansと呼ばれる先住民族の人々が住んでいました。そして長らく北米大陸という外界から遮断された世界で生活して来たために、ヨーロッパでは免疫が確立された数々の病気にも先住民の人達は免疫を持たず、そして様々な病気がヨーロッパから入植者と共に北米大陸に持ち込まれた結果、多くの先住民族の人達が死んでしまったという悲しい史実があるのです。これは先住民族への虐殺と共に語られるべき(・・・もちろん滅多に語られない)カナダの黒歴史でもあるのです。そんな訳で、現在でも先住民族の人達の病気に対するリスクは高く、COVID19のような感染病は彼ら・彼女らにとっては深刻な健康被害をもたらす可能性が高いのです。とくに僻地の先住民族居住地には医療設備も社会インフラも十分に整ってないので、ひとたび感染が蔓延したらコミュニティーごと消滅してしまうなどという恐ろしいことも十分考えられます。そういう理由でワクチン優先順位が高いのです。ただ、そんな中でも「なんで先住民だけ?不平等だ!」というお門違いな事を叫ぶカナダ人がいるのも事実で、これはカナダでいかに先住民族の人達が偏見と差別の中で生きているのかを物語ることでもあり、そんなカナダの歴史や社会問題に理解のない人たちの心ない声を聞くと本当に残念な気持ちになります。
さてそんなコロナワクチン優先枠の中に、なんと!私、シンペーも加わったのです!(なぜだ!?)いや、本来なら私はこのグループには加わっていなかったのです(でもズルしたわけでもないよ)。上記でも述べたように、第1グループは介護施設、ICU、ER、外科、そしてコロナ病棟で働く医療従事者って事だったのですが、これには私が属す腎臓透析科チームが黙っていませんでした。というのも、腎臓透析科は外来なのですが、コロナ感染患者さんも透析治療で病棟から運ばれてきたり、コロナ感染で自宅隔離中の腎臓患者さんも透析治療は受けないと死んでしまうので週3回通ってきます。さらに高齢透析患者さんの多くは介護施設に入居しているのですが、その介護施設のほとんどがコロナクラスター発生中の状況。それに加えて、うちの透析科には隔離室が3室しかなく、あとはカーテンで仕切ることくらいしか出来ないので、結構ヤバめな環境です(っていうかヤバいよね)。ま〜今んとこは、なんとかコロナ感染患者さんのスケジュール調整してギリギリ隔離室3室で回しているけど・・・汗。
そんな状況なので、医師も、看護師も、薬剤師も、栄養士さんも、そして医療ソーシャルワーカーも隔離室に入る時はPPE(防護着)を着用して細心の注意を払っています。これ結構神経を使って疲れるんだよ〜。もちろん看護師さんが一番リスクの高い仕事だけど、意外と医療ソーシャルワーカーもハイリスクだと感じます。と言うのも、ソーシャルワーカーの仕事は聞いて話す仕事。お互いマスクをしていることもあって聞きにくく、ついつい顔を患者さんに近づけてしまったり、患者さんも気を利かせて(?)マスクを外してしまったり、また相談内容によっては患者さんと隔離室で過ごす時間も長くなったりしてしまいます。さらに書類業務なんかもこれに加わると、患者さんの承諾が必要な書類を隔離室に持ち込み、患者さんにサインしてもらう事になるのですが、患者さんの触れたペンや書類なんかは後でどうすればいいの?って結構戸惑いながらも私のオフィースに持ち帰ることになります。ペンは消毒できるけど、書類を消毒したら文字が染みちゃうし・・・そこまで神経質にならなくてもいいのか、それとも神経質になったほうがいいのか・・・。誰かどうしたらいいか教えてください(涙)。
ま〜そんな訳で、チーム一丸となって・・・っていうか腎臓医が一丸となって(カナダでも結局は医者が主導権を握るのさ!)運動した結果、透析チームも晴れて(?)ワクチン接種最優先グループに加入させて頂けることが決定したのでした。でもこれ急に決まったみたいで、最優先の中でも最下層の職場復帰1ヶ月も経っていない医療ソーシャルワーカーの私などは、1月のある日に突然呼び出され問答無用にワクチン第1回目を打たされたのでした!っていうのは言い過ぎでした。もちろん打ちたくない人は打たなくてもよくて、あくまでも任意なので、私はもちろん自ら希望して打って頂きましたよ。日本でもカナダでもまだまだワクチンの副作用の心配をされている人は多いのですが、私も内心ちょっとドキドキでした。ワクチン接種に関して、透析科内でも医者によるワクチン説明会のようなものが開かれたのですが、そこでも「副作用は一般のインフルエンザワクチンと大きな違いはなく、心配する必要はない!」と言われて一安心かと思いきや「でも長期的な意味での副作用は・・・誰にもわかりません」とも言われまたまた不安に。「しかしコロナ危機に対応しなければいけない医療従事者としては、ワクチンを打つ選択肢の方が打たない選択肢よりも遥かに安全でリスク回避できる事は間違いない」と断言され、それならやっぱり打とう!と決意したのでした(だって医者が言ってるんだもんね!と、こういう時は医者の言うことを鵜呑みにする私は単純なのか素直なのか?)。そしてこの説明会での私のお気に入りは、ドクターの最後の決めゼリフ「We are on the same boat!」です。日本語に訳せば「泥舟に乗る」(なんと恐ろしや!)・・・じゃなかった、えっと、「一蓮托生」・・・つまり仲間と運命を共にする!
素晴らしいじゃないですか。医療に携わる者が一致団結してこのコロナ禍と対峙する!そしてワクチンに希望を託す!そうだ!そうなんだ!ワクチン打つぞ〜!と私は一気に気合が入ったのでした。
そしてワクチン接種。会場はうちの病院の大広間。
上司から与えられたパスワードを使ってオンライン予約出来たものだけが参加できるザ・プレミアムな場、それがワクチン接種会場。まずは職員証と保険証を提示してチェックイン。その後は2mのソーシャルディスタンスを保ちつつ列に並び、10人はいるワクチン執行者(看護師または薬剤師)に呼ばれるのを待ちます。そうして呼ばれたら、今回打つのはPfizerファイザー社の製品だと教えられ、ブスッ!と筋肉注射。あんまり痛くなかった。そしてその後は会場内の指定待機所で15分から20分くらい座らされて、アナフィラクシーショックなど万一の事態に備えるために安静にします。で、私は何事もなくそのまま職場に戻ったのでした。
とくにこれといった副作用もなく、まー強いて言えば2日ほど注射された腕が痛かったくらいでしょうか。
薬剤師によれば、免疫は接種後14日ほどで出来るそうで、接種後21日〜28日以内に第2回目の接種を受けてください!とのことだったのですが・・・只今、ファイザー製品入荷大幅遅延中(涙)。これどうやらカナダだけでなくて世界中の問題らしいですね。なんでもヨーロッパのファーザー工場からの出荷が遅れているからだとか。ちなみに私は1月の13日に接種したのですが、遅延のおかげで2回目は28日以内どころか42日目以降になるとのお達しが職場からありました。もちろん周りの職員も同じ状況なので「おい大丈夫なのか?ちゃんと効くのか?いつまで待たされるんだ?」と病院内プチパニック騒動に。そんなパニックを抑える為なのか、それとも新事実が発見されたのか、保健局長からは「1回目だけでも90%ほどの予防効果があるのでご安心ください。2回目も28日以降の接種でもなんら問題ございません」というご案内メールが送られてきました。う〜む、これって事実なのか?ただの気休めじゃないの?と普段から疑り深い私は思うのですが、でも1回目はもう打っちゃったし、2回目待つしかないんだし、もう信じるしかないよね・・・っていうか本当であって欲しい!!!
・・・そう願いながら私は待ちました、2回目の接種を。待って、待って、待って、そしてとうとう先週2月25日についに待望の2本目投与。これで、やっと、私は、不死身になったのでした〜祝!!!(って思っちゃダメだよ、良い子の皆さんは。不死身にはならないからワクチン2回打っても)。もちろん2回目接種が終わったからって、コロナバリアが完璧にできる訳ではないんだけれど、気持ち的にはかなり楽になりました。やはりコロナ感染が深刻な病院での勤務は神経が擦り減ります。いつどこで自分が感染し、そして誰にうつしてしまうのか、そんな恐怖を抱えながら私たち医療従事者は日々業務をしているので、ワクチン接種の完了はそんな恐怖から少しだけ私達を解放させてくれます。もちろん精神的なもの以上に、実際ワクチンによって病院内での感染リスクを大きく抑えることができるので、職員や患者さんの肉体的負担も減って、これから少しずつ状態が良くなるという希望を持てることが一番喜ばしいことだと思います。でも、まだまだフェーズ1がやっと終わりに向かっているワクチン接種状況においては、終息宣言に向かうのはもう少し先のことになりそうですね。今月からは、いよいよ高齢者のワクチン接種も始まります。順調に計画通り進む事を願わずにはいられません。また日本でもワクチン接種が予定通り進むことを祈っています。早く終わらせたいですね、コロナ禍。
皆さんもお体を大切に〜。
おわり
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