突然の不幸 残念だったこと・・・
昨日の記事の続きのような話になるのですが・・・
ここ三週間、私の患者さんが立て続けに4人亡くなられました。腎臓透析患者さんとのお別れに慣れているはずの私でも、さすがにこう続くと精神的にしんどくなります。とくに4人とも50~60代と高齢患者さんの多い腎臓透析科では比較的若い人達だったのでなおさら堪えます。それでも4人中2人は自分の意思で透析治療を止める決断を下し、納得してホスピスケアへと移行して亡くなられので、少しは慰めになります。しかし残りの2人は突然の容態変化によって亡くなられたので私のショックも大きかったです。とくに先週のTさんの急逝は本当に私の予想外の出来事だったので、今もなんだか信じられません。
Tさんとは彼が透析を始めた二年前から担当の腎臓ソーシャルワーカーとして関わってきました。透析治療開始直後は、お金の問題、通院の問題、心理的問題などでTさんもTさんの奥さんも大変不安な日々を過ごされていました。そういう中で、ソーシャルワークの相談業務を通して私はTさんや奥さんと親交を深めていきました。Tさんも奥さんも2人とも音楽が大好きで、Tさんはドラム、奥さんはピアノを弾くのが趣味でした。晩婚の2人だったので子供はなく、それでも2人でひっそりと仲睦まじく暮らしている、というのが私の印象でした。
そんなTさんとは先週の木曜日にお話をしたばかりで、その時Tさんは元気そうに「久しぶりに友達に会いに旅行に行きたいんだけど、透析治療の手配はどうすればいいかな?」と言って、私に透析旅行についての相談をしました。「透析旅行の手配は簡単にできますよ~」と言った私に嬉しそうに微笑んだTさんの顔が忘れられません。いつでも穏やかで、職員誰にでも丁寧に感謝してくれるTさんは、透析科の職員からもとても好かれていました。私もTさんとお話しするときは癒されたものです。
ところが先週の日曜日、Tさんは腹膜炎で入院。月曜日には脳溢血を起こして意識不明の状態に。私がTさんの入院を知ったのは不覚にも水曜日のチームカンファレンスの時でした。カンファレンスの後すぐに私は病棟のTさんの部屋を訪問し、奥さんを慰めに行きました。カンファレンスでは意識不明とドクター達が言っていたのに、私が部屋に入るとTさんは私に目配せをして少し微笑んだのです。奥さんに「シンペーさんが来たよ」と言われたTさんは、そこでも再び頷いてまた少し笑顔を見せたのです。「あ~良かった意識戻ったんだ!」思ったよりも調子が良さそうで、私はホッと安心しました。
しかし奥さんによれば、Tさん話すことが出来ないらしく、手を握り返すことでしか奥さんとはコミュニケーションが取れないとのこと。医師からも重度の後遺症が残るかも知れないと言われた奥さんは、真剣にTさんの透析治療中断とホスピス緩和ケアへの移行を考え悩み、その相談を私としたのでした。突然の出来事に驚き泣きながらも、Tさんの今後のQOL(生活の質)を考え、Tさんの尊厳のために現実的なケアプランを考えようと一生懸命頑張る奥さんには頭が下がる思いでした。
そして翌日木曜日の朝、病棟のソーシャルワーカーが私がいる腎臓ソーシャルワーカーの事務所に飛び込んできて、Tさんが数分前に突然亡くなられたと教えに来てくれたのです。急いで病棟に行くと、奥さんはカンファレンス室で看護師と抱き合って泣いていました。私も奥さんとハグをして、奥さんのそばに寄り添いました(それくらいしか出来ないのが悲しかった・・・)。そのうちに、奥さんが少しずつTさんに起こったことを私に話してくれました。朝、奥さんがTさんの病室で本を読んでいた時、寝ていたはずのTさんの呼吸が止まっていることに気が付いたそうです。それで急いで医者と看護師を呼んだのですが、Tさんの息は戻ることがありませんでした。
あまりにも急だったので、奥さんも信じられないという顔で、それでもTさんが苦しまなくて済んだのが幸いだったと気丈に振舞われていました。しばらくすると、Tさん担当の看護師が来て、Tさんの処置が終わったからお部屋で対面できますよと教えてくれました。奥さんの許可を得て、私と奥さんの2人でTさんのお部屋に行くと、Tさんは安らかな顔で寝ている・・・はずだったのですが、なんとTさんの目は見開いたまま、顎も開いたままの姿で、なんとも居た堪れなくなりました。結局、奥さんがそっとTさんの瞼を閉じ、そして額にキスをしてお別れを告げたのです。
それにしても、私、Tさん担当の看護師の気の利かなさにガッカリしましたよ。それともこれってカナダの文化なんでしょうか?いや、でもそんな筈はありません。だって過去に立ち会った患者さん達は、みな眠ったような安らかな顔をしていました。それとも、それも家族が瞼を閉じてあげたのでしょうか???顎だって、きちんと閉じてあげた方が、患者さんの尊厳も、そして家族の気持ちも守ることが出来るのに。なんだかガッカリして、腹が立って、そして悲しくなって・・・でも、きっと私はTさんの急逝にショックを受けて、そのやるせない思いがこんな感情を引き起こしているんだと思います。亡くなられた直後の患者さんを見るのは、医療ソーシャルワーカーだって辛いんです・・・とくにちゃんと処置されてない患者さんと対面した後は。。。(だからC病院の看護師さん、お願いだから瞼と顎は閉じてあげてください!)
奥さんとは最期にまたハグをしてお別れしました。Tさんが亡くなられた今、腎臓ソーシャルワーカーの私と奥さんとの関係も終わりを迎えます。これも私が悲しくなる一因です。せっかく築き上げた関係も患者さんの死とともに終える。なんだか二重の別れと言う感じです。奥さんもそう感じたのでしょうか?いつでも透析科に遊びに来てくださいね、とは言ったものの、そう気安く来れる訳もなく・・・私はこれから一人奥さんが、もはやTさんの居ない静かな自宅へと帰っていくのかと思うと、胸が締め付けられる思いで一杯でした。本当に私に出来ることが少ないのがやるせない。奥さんには「いつでも電話くださいね!」としか言えませんでした。
もうしばらくは、誰にも亡くなって欲しくないな、とさすがの私も弱音を吐きたくなる今日この頃です(っていつも弱音吐いてるけどね 笑)。
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