ソーシャルワーカーは腎臓透析科のアイドル!?
実は私、自慢じゃないんですけど、透析患者さん達の人気者、アイドルなんです。同僚にも、シンペーとお話しするのを楽しみにしている患者さんがいっぱいいて人気者だね~と羨まれるほど。そして私のファンである患者さん達の平均年齢は80歳。そうなんです、私、おばあちゃんキラー(あ、なんて縁起の悪い言葉・・・)なんです。でもジャニーズやAKB48や乃木坂46(?)のような巷のアイドル達と同様、何もしないでアイドルになれるほど世の中は甘くはありません。彼ら彼女たちが日夜血汗を流してファンと積極的に握手会などの交流活動を行なって、その人気を高めているように、自称「透析科の氷川きよし」である私も、音痴な歌を患者さんに聞かせて苦しめる代わりに、暇つぶしの相手・・・いえカウンセリングを積極的に行なうことで、その人気を維持しているのでした。。。
な~んてのは嘘で、私がおばあちゃん患者さん達と積極的にお話しするのは、彼女たちがとっても優しくて、私の事を心配し、気にかけてくれるからなんです。まるで私の本当のおばあちゃんのように・・・おまけに、お話に行けば喜んでくれるし、ちょっとした些細なお手伝いにも大感謝してくれるので、こっちの方が嬉しくなっちゃいます。ホント周りにいる無愛想で失礼な患者さん達も彼女たちを見習って欲しいもんだ(・・ヤベ、本音が出た)。特に仕事で辛いことがあったり、失敗して凹んでしまった時など、ついついお気に入りのおばあちゃん患者さん達のところへ行ってしまいます。普段の仕事では、こっちからHow are you?って患者さんに聞いても、患者さんからHow are you?と聞かれることは滅多にありません。でも、おばあちゃん患者さん達の多くは、「今日も仕事大変?」「元気にやってるの?」「無理しちゃダメよ」なんて暖かい言葉をかけてくれるんです。あ~癒される。
医療ソーシャルワーカーのお前が患者から癒されてどうすんだ?って声がどこからか聞こえてきたような・・・でも、その通りです。私の仕事は癒すことで癒されることではないんです。でも、癒しって、癒してる方も癒されませんか?
私の叔母は大の氷川きよしファンで、全国津々浦々のコンサートに追っかけしてます。叔母によれば氷川きよしファン層はおばちゃんとおばあちゃんが大多数だそうで、みんなで助け合って応援しているそうです。歩行器で来たおばあさんが「きよし」のコンサートで大興奮して飛び上がったり、車椅子を乗り捨て「きよし」に握手を求めるべく走りだすおばあさんがいたりと、助け合わなくても十分元気そうじゃん、って思ってしまうような話が満載なのですが、それも「きよし」パワーの凄さなのでしょう。
さて、そんな叔母も氷川きよしがテレビに出ると、まるでわが子、わが孫のように「きよし」の事を心配し、また自慢するのです。話が長くなって退屈なので、私はあまり叔母とは「きよし」の話をしないようにしているのですが、ついうっかり「きよし」の名前を出しちゃって、ここぞとばかりに「きよし」について延々語る叔母の表情は嬉しそうで活き活きしてます。
つまり私が言いたいのは、おばあちゃん患者さん達にとっては、もしかしたら心配できる誰かが身近にいることは、それ自体が癒しになるんじゃないか?という事なのです。でもそれが本当の身内だと、今度は心配しすぎて癒しどころか心労になってしまうこともありえますが、氷川きよしや私ぐらいだとちょうどいい距離があって、心配しやすいのかもしれませんね。な~んて、氷川きよし様の名をお前ごときの件で気安く呼ぶでない!と叔母に𠮟られそうですが。
本来、医療ソーシャルワーカーのニーズを満たすために患者さんを「使う」のは、ソーシャルワーカー倫理に反しています。ですので、私もあくまでも患者さんのアセスメントとサポートを第一目的として、おばあちゃん患者さんを含めたすべての患者さんと接しております(と念のため書いておきます)。しか~し、医療ソーシャルワーカーだって人の子、やはり気が合う、そして安らぐ患者さんとはより多くの時間を割いてしまうのです。でも、私と話すことで癒され、そして私も患者さんから癒される・・・これって素晴らしい共生関係だと思うのですが、ダメですか?涙
さて、この透析科では私は「氷川きよし」として高齢女性の心を虜にしているのですが、かつて透析科で勤めていた元同僚のKさんは、その美貌と金髪で透析科の若い男性患者さんを悩殺してました。私が話しかけても「あー」とか「うー」とか「別に・・・」とかまったく面倒くさそうにしか返事しない患者さんが、Kさんの前では「Kさん元気~?俺ちょっと困ったことあってさぁ~、相談にのって~」って嬉しそうに話してるのを見て、何度ムカついたことか。そして私の現在の同僚Rさんは、その親しみやすい笑顔と陽気な性格から「藤あや子」・・・いや「天道よしみ」のように透析科のおじさん、おじいさんから絶大な人気を誇っているのでした。このように患者さんと積極的にお話をするソーシャルワーカーは、アイドルのように患者さんの心を掴むときもあるのです!
こんな風に腎臓透析科では、私はアイドル・・・じゃなくて医療ソーシャルワーカーとして「ファン」であるおばあちゃん患者さん達と持ちつ持たれつの関係で、お互いに癒しあってるのですが、そんな私のファン達も、一人また一人と亡くなられていくのが悲しい腎臓透析科の宿命です。私の腎臓透析科での人気を維持するためにも、これからも「売り込み」活動を新規の(高齢女性)患者さんと積極に行なおうと思います(そしてもちろんそれ以外の患者さんにも)笑。
0コメント