「世界女性の日」と「世界腎臓の日」が同時開催!


なんと昨日、3月8日は「世界女性の日」であり「世界腎臓の日」でもあったんです。なんという奇遇。うちの病院でも女性の啓蒙イベントが行われたり、腎臓病キャンペーンを行ったりと大忙しな一日でした。



さてこの同時開催を意識してか、今年の腎臓の日のテーマは「女性と腎臓病」。世界腎臓の日サイトによれば、現在世界中で1億9500万人の女性が腎臓病を患っていて、毎年60万人以上が腎臓病で亡くなっており、腎臓病は女性の死亡原因の8番目に位置するそうです。そして女性の方が男性よりも腎臓病のリスクが高いとのこと。それは身体上の違いというよりは、むしろ社会・文化的要因が大きく影響して、例えば、多くの発展途上国では、腎臓病治療を受けれる女性は男性よりも遥かに少なく、しかし腎臓ドナーになるのは女性の方が男性よりも多いというのが現実だそうです。結局腎臓病においても、男女の不平等が、男女間での腎臓病予後の違い、リスクの違いを生んでいると言う事なのです。



また女性の腎臓病患者特有の問題として、妊娠・出産のリスクを挙げています。一般的に、腎臓病を患っている患者さんの妊娠・出産リスクは高く、また患者さん自身も高血圧障害によるリスクにさらされます。しかし、インテンシブ(高頻度)な透析は、腎臓病患者の妊娠・出産リスクを大きく減らせることが研究で分かっており、将来的に赤ちゃんと女性の体を守るためにも、妊婦患者向けの早期の特別透析プログラム創設・支援が必要性だと唱えています。ただここでも南北貧困問題が陰を射し、発展途上国の腎臓病女性の妊娠・出産リスクは、不十分な医療環境と性差別のため、今だ極端に高く深刻なのが現状で、特別透析プログラム創設以前に、十分な医療環境と女性の医療を受ける権利を整える事が最優先事項となっています。



このような記事を読むと、やはり発展途上国の女性の地位は低く、彼女らの生命さえも脅かされている事に悲しくなるのですが、しかし、じゃー先進国の女性の地位がそこまで上がったのか?という言うと、う~むそれはどうだろうね?と言う疑問も残ります。私の周りを良く見てみれば、カナダだってまだまだ男尊女卑社会だってことが分かります。例えば私の職場。病院内のソーシャルワーカーで男は私一人で後は全員女性。でもソーシャルワーカーの統括部長は男。看護師の9割は女性、男性は1割。でも看護師出身の腎臓科部長職の男女比は5:5。腎臓医の男女比は、男性医12人に対し女性医は2人。栄養士と医療事務員は100%女性。どう見ても男女比のバランスが取れているようには思えません。大学でソーシャルワークを学んだ際も、学生60人中男子生徒はたったの4人なのに、教授の7割以上が男でした。上に行けば行くほど男の比率が高くなっていくのは、医療業界に限らず、カナダの殆どの職場で見られる現象です。



でも、カナダで生活していると、「もう性差別は過去の事。今は男女平等の時代!」とか「人種差別なんて過去の事。今は人種なんて関係ない時代!」なんていうスローガンがどこからともなく流れてきて、気が付くと(私を含めて)みんな、それを信じ込んでしまうようになるのです。でもよ~く目を見開いて周りを見渡せば、そんなことがデマカセだってすぐに分かるはずなのに、どうして気が付かなくなってしまうんでしょうね?それとも、私たち自身の心の平穏を保つために、あえて無意識にそういう嫌な・汚い事は見ないようにしているんでしょうか?



私が個人的に嫌いな事に「発展途上国の状態に比べたら、カナダは恵まれてる」とか「過去に比べれば、私たちの権利はずいぶん認められるようになった」とか言うような、自分たちより劣ってる(と思われる)ものと比較することです。だって、こんな風に言われたら、現状に満足しなさい!って言われているみたいで、黙るしかなくなりますし、また問題意識を持つのが難しくなってしまいます。そうして気が付くと「何者か」によって、私たちは現状の不公平にも気が付かず、気が付いても不平も言えず、「何者か」の利益のために自分の不利益を享受してしまっているんじゃないか?と被害妄想気味の私は勘ぐり、そして将来が不安になるのでした。



そんな中、なんとスペインの女性は、今日「世界女性の日」に24時間ストに突入したというニュースをみました。これによれば、スペインの首都マドリッドを中心に、スペイン中で500万人以上(凄い!)の女性が「権利と賃金の男女平等」を求めて職場そして家庭で24時間ストをしたというのです。その結果、公共機関に支障が出たり、航空便が遅延したり、ビジネスを閉鎖したところも出たそうです。こんな事が出来るスペインの女性は、もうすでにどの先進国よりも女性の地位が高いんじゃないかと思ってしまうくらい、画期的な運動だと私は思いました。



世界の多くの女性は縁の下の力持ちまたは陰のサポーター的役割で働く事が、いや働かせられることが一般的です(それも多くは無賃金で)。でも縁の下&陰の存在なので、ついついそんな女性たちの活躍は黙殺され、それが普通なのだ!という風潮が世の中にはあります。そんな女性たちが突然ストに突入したら、それは世間に社会がいかに女性の力に支えられているのかを思い知らせる一大チャンスです。もし女性が長期ストライキをしたら、誰が子育てをするのでしょう?誰が介護をするのでしょう?誰が家事をするのでしょう?職場においても、女性が多い医療・介護の現場は壊滅的です。保育所や学校、そしてサービス業なども軒並み大打撃です。でもそうなって初めて、いかに世の中の仕事が男女比においてアンバランスな状態で成り立っているか世の人は思い知るのです。



そんな訳で、このスペインでの女性によるストライキ、私は大変感銘を受けました。でも今のところカナダではそんな盛り上がりすら起きていないのがとっても残念です。母性的職業だと揶揄される看護師や介護師、そしてソーシャルワーカーに従事する職員の男女比が5:5にならない限り、ここカナダにおいて新の男女平等などあり得ないのだ!と男女比のバランスが極端に悪い医療業界で働く私は思うのでした。


ところで皆さん、来週は「世界ソーシャルワーカーの日」だって知っていました?3月は「世界○○の日」が多いですね~。ちはみに来週の「世界ソーシャルワーカーの日」、うちの病院のソーシャルワーカー達はカフェテリアで寄付金集めをしますので、みなさんぜひお立ち寄りください(って遠すぎるか・・・)。。。

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