毎週水曜日の「文化大革命」ワークショップ!
先月から私が勤めるここC病院の腎臓透析科では、マネージャーと職員全員(強制)参加のUnit Cultural Norm Workshopと呼ばれるワークショップが毎週開かれております。このUnit Cultural Norm Workshop、日本語に訳すと「文化大革命運動」・・・って全然違う訳になってる!?いやいや正確に訳せば「透析科文化規範ワークショップ」なんてお堅い感じになるんでしょうが、私からしたらこれは「文化大革命」なのです!(笑)。
そもそもUnit Cultural Norm Workshopってなに?って話なのですが、私も正直よく分かりません。今のところ、過去4週間にわたって外部からコミュニケーション専門の講師を呼んで、「円滑なコミュニケーションとはなんぞや?」とか、「職員同士の紛争を避けるにはどうすべきか?」とか、「上司と信頼関係を築くための秘訣とは?」なんてのを、毎週水曜日の午後2時から3時までの1時間、みんながナースステーションの前(!)に集まって、患者さんに丸聞こえになるのも構わず喧々轟々話し合うっていう大胆なワークショップが開かれているのです。
私が思うに事の発端は、マネージャーと看護師達との軋轢から生じているようです。ここ透析科では一年ほど前から看護師の編成およびスケジュールが変更され、看護師の受け持ち患者数が増え、看護師はこれに対して組合も交えての反対運動を行ったり、また計画的(?)な病欠などを増やしてマネージャーに徹底抗戦を行っていました。さらに問題患者さんJさんの件でも、今ひとつマネージャーから暖かいサポートが得られないと看護師達は業を煮やしていました。それに加え、マネージャーEさんの高圧的な態度(意図的ではないと思うが、彼女の性格か?)と、ついEさんの口から出てしまう余計な一言(過去ログ「サンドイッチにさせられるソーシャルワーカーの悲しき運命」参照)が、看護師達のフラストレーションをさらに高め、これがマネージャーEさんとの大きな軋轢を生んでいるようでした。ソーシャルワーカーの私も、この軋轢から来るギスギス・キリキリした空気を透析科内でビリビリと感じます。特にスタッフミーティングの時などは、看護師とマネージャーEさんとの白熱した討論という名の口論に巻き込まれ、平和主義の私としては「まーまー皆さん落ち着いて!」と言いたくなるけど、とてもじゃないけど怖くて言えないピリピリした雰囲気に、何度私はすくみあがった事でしょう。夫婦喧嘩に巻き込まれた子供の気持ちって、こんなだろうか?と激論を交わす彼女達の狭間にいるソーシャルワーカーの私は思うのでした。私の独断と偏見に基づいた経験では、看護師には割と性格の強い人が多いのですが、その所為もあるのか元看護師であるマネージャーEさんVS現役看護師達との抗争は終わりが見えない泥沼へと突入していくように、傍観者であるソーシャルワーカーの私には見えるのでした。そしてこの煮詰まった現状を打破しようとマネージャーEさんが考えたのが、毎週水曜日午後の「文化大革命」ワークショップだったのです。
第一回目のワークショップでは「職員間コミュニケーション向上を図るために出来る事」をテーマに各々それぞれに提案させ、それを二回目までに実践するよう講師は勧めました。以下が職員達から出された提案です:
• 出勤時には皆に挨拶をする
• 助けて貰った時にはお礼を言う
• いつも笑顔を心がける
って感じで・・・「え~!?いまさらそれなの!?」と私は心の中で叫んでしまいました!これって私が日本で小学校の時に学んだことですよ(笑)。わざわざコミュニケーション専門講師を呼んだ第一回目ワークショップの結論が「挨拶とお礼と笑顔をしよう!」だなんて、自称コミュニケーションのプロであるソーシャルワーカーの私からしたらチャンチャラおかしい内容なのでした。あははバッカみたい。しかし!職員・同僚の皆さん結構素直です。私のように根が捻くれてないので、このワークショップ後、目に見えて職員間で挨拶とお礼と笑顔が増えました。そしてこれ、かなりの効果があるのです。今まではツンとしてたり、下を向いて歩いていた看護師達から「しんぺーおはよう!」って言われると私も嬉しくなって「おはよ~!(ってこの人の名前なんだっけ?)」と笑顔で挨拶返しをしてしまいます。またそうなると、それからはその人達にアプローチがしやすくなってコミュニケーションも円滑に進み仕事もはかどるのです・・・って、あら?凄い効果あるじゃんか!(笑)
という訳で第二回目にワークショップは突入。この回ではAssume Positive Intent 「相手には前向きな意図があってやってるんだ!と思うクセをつける!」をテーマに、それぞれがAssume Positive Intentを練習します。例えば、私がマネージャーEさんから「しんぺー!もっと頑張って!」と言われたとしましょう(って実際言われた・・・笑)。この時、「なんだこの女!私が一生懸命働いてね~って言いたいのか?」って解釈すると怒・怒・怒になって、マネージャーEさんが大嫌いになりますが、しかし「あ~Eさんは僕に期待をしてくれているんだな~」って解釈すると嬉々として頑張ろう!って気になります。これ言うのは簡単ですが、やるのはすごく難しいです。とくに私のように捻くれている人には。怒りの解釈は簡単に出来るのに、ポジティブな解釈をしようとすると「あははは、しんぺーばっかじゃね~。Eがお前に期待なんかしてるわけないじゃん。ぜったいお前が仕事してね~って思ってんだよ」と心の(悪魔の)声が聞こえてくるのです。そうなるとまたネガティブな解釈に頭が支配され、怒りや悲しみの感情が広がってしまうので「いやいやそんな事はありません。しんぺー、あなたはこんなにも仕事を頑張っているのだから、Eさんにもそれは伝わっているはず。でなかったら頑張って!なんてわざわざ言わないですよ。しかもEさんの顔、優しげだったでしょ」と心の(天使の)声を聞いて、ポジティブに考えるクセをつけないといけないのです。でもその後すぐに「優しげな顔?あれはヘラヘラとお前を見下した顔だよ」とまた悪魔の声が聞こえるって繰り返しなので、だから難しいんですよ。
でも講師の人も言うように、この「ついついネガティブに考えてしまう」ってのはヒトとして一般的な行動なので、皆さん心配する事はありません(って私だけ!?)。人間とは不信感が拭えず、自信が無い生き物なのでしょう。ネガティブに考えるほうが、ポジティブに考えるよりも楽で簡単で気持ちが良いのです(あとで、気持ち悪くなるけど)。だからこそ、物事をポジティブに捉える練習を日々行わないとAssume Positive Intentはクセにはならないのです。もちろんネガティブな解釈が当たっている場合もあります。でも一番大事なのは、自分がどう感じるかということ。例え他者が意図的に嫌なことを言ったとしても、言われた本人がポジティブに解釈すれば、本人は嫌な感情を感じずに済むので、結果的には意地悪な他者に勝った(?)ことになるのです。ですから長期的に見れば、明らかにAssume Positive Intentのクセをつけた方が自分自身のメンタルも楽になるのです・・・でも難しい(涙)。その証拠に、その後、第三回、第四回ワークショップも未だにこのAssume Positive Intentの練習で終わっています(笑)。皆も苦労してるみたいです、むふふ、私だけじゃないみたいですよネガティブ思考の人!
この他にも、ワークショップで提案されたコミュニケーションを向上させるコツに、
• 職場では英語を話す(これは多言語社会のカナダらしい問題)
• 仲間はずれをしない(小学生か!)
• 同僚・上司の噂話をしない(これ無理でしょ実践するの 笑)
• 月に1回おやつ・お茶会を職場でやる(これ大賛成!)
なんて提案も出されました。でも、みんな結構それなりに職場でコミュニケーションの苦労しているんだな、と改めて分かって驚くとともに、自分だけじゃないんだってちょっと安心しました。多分、みんなも同じように安心したんじゃないかと思います。やっぱり他人と働くって神経使うし、性格も違うから色々問題も起きるもんね。
そして次回のテーマは「相手の意図を聞く!」。これは難しいですよ。勇気が要ります。「しんぺー!もっと頑張って!」と言ったマネージャーEさんに「あの、それってどういう意味ですか?私がちゃんと仕事してないって言う意味なんですか?」なんて直接Eさんに聞けるのかって?無理でしょ、無理!・・・って思ったらコミュニケーションの向上は図れないから練習しろ!って言うのが次回のテーマなのでしょう(笑)。がんばります・・・
と、こんな感じで「文化大革命運動」だ!って最初は小バカにしていた毎週水曜日午後のコミュニケーションワークショップ。結構、それなりに成果が出ているんじゃないかと私は思います。少なくとも、私自身のコミュニケーションにおける弱点を浮き彫りにし、考えさせてくれ、そして向上の為の練習の場を与えてもらえる事には感謝しています・・・なんて早速、ポジティブに考える練習をしてみました。あ~めんどくせ!なんて思ってはいませんよ、本当に(笑)。おわり。
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