ソーシャルワーカー、患者の飯を食う!
先月、なんとか知恵を振り絞って私はある患者さんに1ヶ月限定で、宅配弁当を手配する事に成功しました。コミュニティー資源を活用・・・というか、腎臓透析患者専門のNPOの代表に頼み込んでなんとか一月分の宅配弁当代を賄って貰うことになったのです(涙)。そもそも普段はこんな風に患者さんのご飯の心配まではソーシャルワーカーはしないんですけど、でもマネージャー直々のお達しと、そしてホームレスになってしまい体重を急激に落とした患者さんを心配しての措置として、「宅配弁当1ヶ月」という特例かつ至難の業を成し遂げたのでした。
ところがです!先週からこの患者さん、この宅配弁当の受け取りを拒むようになったのです。第一週目は病院に届けられた弁当全部を家(シェルター)に持ち帰ったのに、先週は2食分だけ受け取ると後はいらないと言うのです。この宅配弁当、実は全部冷凍されていて、一週間に一回、私宛に病院まで宅配されるのですが、病棟にはこの弁当を保存できる冷凍庫がないので、とりあえずソーシャルワーカー事務所の冷蔵庫に入れています。でも冷凍食品なので長期間は冷蔵庫で保蔵する事も出来ず、仕方が無いので残ったお弁当・・・私が食べました!(笑)
この弁当宅配サービスは、主に高齢者や病院を退院したばかりで食事の用意が出来ない病人を対象に行われており、私も仕事柄、透析科の患者さんにお勧めしています。宅配弁当サービスには、毎日暖かいものが届けられるものと冷凍のものの2種類があって、それぞれ長所短所があります。毎日届けられるお弁当は、出来立てが食べられる反面、毎日のメニューが決まっており種類を選ぶ事は出来ません。また毎日の宅配のため、決まった時間に家にいられない高齢者や患者さん(例:透析患者)にはハードルが高いのです。また味の方の評判も今ひとつで、透析患者さんには私はあまりお勧めしてきませんでした。それに対して、冷凍の弁当宅配は週一回の宅配で一週間分の食事を持ってきてくれ、また冷凍庫で保存がきくので食べれなかった分も持ち越すことが出来ます。さらに選べるメニュー・種類も豊富にあるので飽きがきません。おまけに調理は電子レンジでチンするだけ。そんな訳で、患者さんからの評判も上々なので、食事の準備がむずかしい患者さんには、私はこの冷凍弁当宅配をすすめてきたのです。
しかし、患者さんにお勧めしてきたこの冷凍弁当、実は私は今まで食べた事がなかったのです。患者さんの中には「そこそこ美味しい」という人と、「今ひとつ美味しくない」という人の二通りのパターンがあり、う~む一体どんなもんなんだろう?と食べ物には目がない私はずっと興味津々だったこの冷凍弁当。ついに私にも味見をする機会がこの患者さんのお陰でやって来たのです!
今週は7食あるうちの2食しか例の患者さんは受け取らなかったで、ソーシャルワーカー事務所の冷蔵庫には5食の冷凍弁当があります。それぞれ違う種類なので、選びたい放題です!イェ~イ、どれにしようかな~、と私が選んだのはこの二種類。1)ソーセージ&マッシュ弁当、そして2)海老とステーキ弁当。ソーセージの見た目は今ひとつ・・・でも海老とステーキはそこそこ見栄えも良くて期待が持てそうです。
そして肝心のお味の方は・・・・・・・・・まずいよ~(涙)。
まず味が薄い!味が全然しないから塩ぶっ掛けました。でも後で気がついたのですが、これ患者さん用のご飯なので減塩仕様だったのです。どうりで味が薄いはずだ。おまけに私は友達から「塩魔」と呼ばれるほど、なんにでも塩を振るかける増塩派。こんな味気ない冷凍弁当などそもそも私の味覚に合うはずが無かったのです。しかし、これは減塩仕様を増塩仕様に変更すればなんとかなること。しかし、お味が今ひとつなのはこれだけが問題ではなかったのです。
次なる問題は、添え物の野菜。冷凍したものを解凍したせいか、それとも元の野菜が調理されすぎたのか、とにかく野菜が柔らかすぎるのです。「う~む、口の中でとろけるようだ!」と、これがステーキなら「美味!」と言えるのですが、口の中でとろけるような野菜の食感とは、どちらかと言うとドロッとした感じでウゲゲとなってしまいます。おまけに味もないので、これも漬物なみに私が塩をぶっ掛けたのは言うまでもありません。
そしてメインのソーセージとステーキ。
お味のほうは・・・味が無い!塩が必要だよ!
食感は・・・ゴムみたいに柔らかいけど硬くて噛み切れねぇ~!
量は・・・少ない!(横に)育ちざかりの私には一食分に三食は必要だよ!
とこんな感じで、嫁の料理にけちをつける姑みたいなんですが、やっぱり「まずい」のです。
私が思うに、例の患者さんが2食しか受け取らなかったのは、もしかしたらお味のせいかもしれません・・・そして彼が受け取った2食はいずれも「照り焼きチキン」と「チキンカレー」だったので、どうやらチキンのお味は悪くないらしい(笑)。次回はぜひチキン料理を食したいものだ、と思うのですが、いやはやこれは困ったことになりました。
まず第一に、せっかく頼み込んでNPOからサポートしてもらったのに、肝心の患者さんが宅配弁当を受け取らないのでは本末転倒です。おまけに残ったお弁当をソーシャルワーカーの私が食べてるなんて知られでもしたら・・・。その為にも、来週の弁当を手配する前に、患者さんに直接なぜ弁当の受け取りを拒むのかをじっくり聞かないといけません。場合によっては「照り焼きチキン」弁当x7食のオーダーに変更するなんてことも考える必要があるかもしれません(健康的にはどうなのか疑問だが)。これは病棟の栄養士と要相談です。
第二に、私は今までこの冷凍弁当を患者さん達に推奨してきたのですが、実際食べてみたら「・・・」って感じだったので、今後自信を持ってお勧めできるかどうか微妙な状況です。嘘をついて「本当に美味しいんですよ!」って言うのも嫌ですし、だからと言って「私には不味かったですけど、患者さんなら美味しいと感じるんじゃないでしょうか?」なんて鼻持ちなら無い言い方をする訳にもいかず・・・でも他の宅配弁当の選択肢がないから、やっぱりこれを勧めるしかないのです。宅配にこだわらなければ、市販で売っているスーパーの冷凍弁当の方が3倍くらい美味しいはずです。でも買い物が出来ない高齢者や虚弱な患者さんが多いうちの透析科では、やっぱり宅配弁当という選択肢しかないのが辛い現状です。これはやはり照り焼きチキン弁当を勧めるしかないのでしょうか?(まだ食べてないからなんとも言えないけど)。
第三に、自分も将来年を取り、患者さん達のように自分で買い物や料理が出来なくなった時、こんな宅配弁当しか選択肢がないのか!?と思うと悲しくなり、そして老後が恐怖になってきます。だからと言って、ケアホームの食事がましなのか?と言えば、ケアホームに入居している患者さんからの話を聞く限り、この冷凍弁当とどっこいどっこいな感じです。それでもお金が潤沢にありさえすれば、毎晩美しいお皿に盛られたコース料理が食べられる高級ケアホームに入居するって手もあるのですが、入居費は毎月少なくとも70万円以上です・・・ありえね~。そんな訳で、いずれ私だって直面するこの食事の問題。とくに食いしん坊の私としては人事とは思えず、深刻に考えてしまい、気分が一気にドヨ~ンとしてしまうのです。・・・と言うことは、せめて食べれる今のうちに美味しい物を沢山食べないといけないんだ!と思うのですが、これではせっかく中年太り予防のためにジムに行ったり糖質制限している努力も一気に無駄になりそうです(涙)。英語ではこれをLose Loseと言います。どっちにしても負ける状態。
そんなこんなで、この冷凍宅配弁当、いま私を苦しめています。この弁当によってもたらされる味と食事ケアと倫理の問題・・・どうして美味しく作れないの!?と弁当工場の責任者に詰め寄りたくなる感情を抑えながら、今日も患者さんのために来週分の注文をする自分に葛藤したのでした。だってこの弁当が美味しくさえあれば、全部すべて「うまい」事解決するのに!!!とオヤジギャグで〆させて頂きたいと思います。おわり。
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